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□もう一度、君と。
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大翔と別れ、自室へ込もっていたら、いつの間にか眠っていたらしい。
空が夕日で赤く染まっている。
……泣きすぎたせいかだろうか、頭が痛い。

「……これからどうしよう」

本当にどうしよう。
転校生とは同じクラスだし、大翔とはクラスは違うが同じ学年だから会う可能性はある。
会いたくないな……

「とりあえず、飯食おう」

食欲はないけど、軽くでも食べておかないと倒れてしまうかもしれない。
作る為にキッチンへ行き冷蔵庫を開けるが、中身が何も無かった。
仕方ない、買いに行こう。

携帯と財布を持ち部屋を出ようとドアを開けると、部屋の前に大翔がいた。
なんでいるんだよ!
会いたくなかったのに。

「な……なんで此処に?」
「……智と話がしたくて。部屋、入ってもいい?」

正直、部屋に入れたくない。話なんてしたら泣きそうだ。
でも、大翔がいつになく真剣な顔をしているから、俺は頷き、部屋へ入れた。
俺と大翔はテーブルを挟む形で座った。
気まずい雰囲気で、暫く沈黙が続いたが、それは大翔が話始めたおかげで終わった。

「……なぁ、智。俺さぁ、勝手だと思われるかもしんないけど、智と別れたくない」
「は?」

え?今、別れたくないって言った?
俺と別れたかったんじゃないの?だから浮気してたんだろ?
混乱する俺をよそに大翔は続ける。

「俺ねぇ、智に嫉妬してほしくて浮気したんだぁ。智を傷つけて……最低な事してたって自覚してるし、フラれるのも自業自得って思ってるよ。でもねぇ、俺、智がいないと駄目なんだ。二度と浮気しないから、もう一度だけチャンスを下さい。智の傍にいさせて」

愛してる、俺を信じてほしい、と大翔は言ったけど……信じてもいいのだろうか。
信じるのは怖い。またされるのではと疑ってしまう。
別れるって決めたのは俺で、数時間前に告げたのも俺だ。
だけど、別れると言ったのは俺だけど、まだ大翔が好きだから信じたいと思ってしまう。
信じて、大翔と一緒にいたいと。

「……信じられない。でも、信じたい。あのさ、俺、大翔が浮気するのが嫌だったし、辛かった。もう俺の事が好きじゃないんだと思ってたんだ。俺の事どう思ってるのか何度も聞こうと思ったけど、重いとか面倒くさい奴って言われるかもしれないと思うと怖くて聞けなかった」
「……智」
「ずっと辛くて、もう限界で……別れるって言ったけど、俺、本当はまだ大翔のこと好きなんだ。だから……大翔の事、信じるよ」
「信じてくれてありがとう、智!愛してる。今まで本当にごめんなさい。もう絶対に智を傷つけないから」

そう言って大翔は俺を抱きしめた。
抱きしめられるのは久しぶりで、ドキドキする。

「ねぇ、智。これからは、いっぱいお互いの事話そぉ?俺、智が思ってる事知りたいし、俺が思ってる事知ってほしいなぁ」
「うん、話す。俺も知りたいよ」
「ふふ、さ〜とる」

名前を呼ばれ顔を向けると、優しく微笑む大翔の顔が近づき、唇が重なった。

もう一度、君といる事を選ぶから、ずっと俺の傍に……
 

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