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□サイゴに見たのは……
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2ヶ月くらい前に来た転入生。
彼は生徒会、風紀、それから学園の人気者達に惚れられて親衛隊から制裁を受けていた。
だけど、生徒会役員達に守られている彼に被害はあまりなく、彼が受けるはずだった制裁はすべて彼の『親友』が受けている。
転入生に親友認定されている、この俺が。
なんで、たまたま席が隣になっただけで親友と言われスケープゴートにされなきゃいけないんだ。取り巻き達からも虐めを受けて……馬鹿みたいだ。
俺はいつも嫌だって、拒否してるのに!なんで誰も聞いてくれないんだ!
なんでなんでなんで!
今日もまた、彼に生徒会室に連れて行かれそうになる。今日こそは逃げなないと。
「末里(マツリ)!早く行こうぜ!」
「悪いけど、俺は行かない。行きたくない。一人で行きなよ」
「なんでだよ!オレたち親友だろ!一緒にいなきゃいけないんだからな!」
「俺は君と親友になった覚えはない!俺は君が大嫌いなんだ!二度と俺に関わらないでくれ」
やっと言えた。転入生と取り巻きが何か言っているけど、気にならない。このくらい言えば、もう関わらなくてすむよね?
やっと転入生から解放される、そう思った。
昼休み中庭へ行き買ってきたパンをかじる。転入生のいない食事は、ひどく穏やかだった。
今は放課後、まだ人が疎らに残っている。今日は珍しく親衛隊からの呼び出しもないので、寮へ帰ろうと昇降口へ向かう途中
――ドンッ
「…え?」
上がる悲鳴。
突然の痛みで何がなんだかわからない。突き落とされた事はなんとか理解は出来たけれど。
意識が朦朧としてきて……
誰かに話しかけられているけれど、何を言っているのか理解出来ない。
俺が意識を失う直前……最後に見たのは、真っ赤な血と、野次馬に紛れて歪に笑う転入生の姿。
そして――
お前はもう、いらない。
微かに転入生の声が聞こえた気がした。