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□哀しき魔王の最期の願い
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何もかもどうでも良い。
俺の全ては、あの日失われてしまったのだから。

いつもと変わらぬ景色。だが、それを見るのも今日で終いだ。
勇者が俺を殺しにくる。
どんな瞳で俺を見るのだろうか、どんな声音で俺を責めるだろうか……
楽しみだ。

俺は永く生きすぎた。
あの日の内に皆と共に逝けばよかった。
だが、俺から全てを奪った人間を憎み、逝くことが出来なかった。

今日で終わる。
勇者の手で……

人間を苦しめた俺を、憎しみを込めた瞳で睨み、憎しみを込めた声音で責め、その手に持った剣で俺の躰を貫くのだろうか。

俺の過去を勇者に聞かせたら、俺に同情するだろうか?
まぁ、過去の事など聞かせても、勇者が俺を殺す事にはかわりないか……
俺が人間にした事は消えないのだ。
奴らの俺に対する憎しみも消えない。

「魔王!覚悟!」
『来たか、勇者よ!貴様が来るのを待っていたぞ』

なあ勇者。
早くその剣で俺を貫いて、全てを終わらせてくれ。

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