short

□嫉妬
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「……」
「……」

早速ですが私ピンチです。絶体絶命です。
なななっ何とっ剣城君が私を抱きしめているのでございますよ、無言で。
私本当にどうすればいいの!!いや、でも剣城君はそれ以上喋ることもせず、かと言って離れることもなくある程度一定の距離を保ってる。
先に私の心臓が爆発しそうです、というか爆発しろ。


……あれ?


剣城君って、こんな子だったっけ?


「剣城君?」
「……」


呼び掛けると応えるように剣城君は私を抱きしめる腕の力を強める。
髪が首にかかって少しくすぐったい。
彼は一体どうしたのだろう。どうにも心配になってしまって剣城君の表情を見ようと試みるがそうさせてくれないこの体勢。

……この野郎

剣城君には悪いが私は彼の胸板を押して少し離れる。
此処は一度冷静に話し合おうと顔を上げ剣城君の顔を見つめると、

「怖っ!!」
「は?」
「何でそんな蔑んだ目するのっ何それ怖っ」

剣城君はこの世の終わりのような顔をしているのと同時に私を蔑むように見つめていた。
そんな複雑な表情出来る剣城君は一体何者。恐るべき雷門のエースストライカー。

「俺」
「うん?」
「確かにお前のプライベートには関与しないって言ったが」

剣城君はそこで押し黙る。何っ何なの気になってしょうがない!!
私も黙って俯く剣城君の顔を覗きこもうとするが急に視界が真っ暗になる。
何これ怖い。何で視界が真っ黒になったの。

ごちゃまぜになる思考回路を必死に働かせて考え付いた結果、剣城君の手が光を遮ったと判断した。

私は何だか理不尽に思えて何でこんなことするの剣城君!最近意地悪だ!!と叫ぶと剣城君の手が私から離れた。
あ、私の思いが通じたんだと感動したのも束の間、

「えっ」
「さっきお前の髪触ってた男誰だ?」


剣城君が超笑顔でした。えっ、嘘でしょ。でも目は笑ってない。
あぁぁっ何これ、剣城君の笑顔貴重なのに見れたら嬉しいはずなのに全然嬉しくない!!
むしろ怖い!!

「なぁ」

剣城君がそんな表情で迫ってくるので私は反対方向に走る。
だがさすがサッカー部、意図も簡単に掴まって両腕を後ろでまとめられ近くにあった壁に身体を押しつけられて逃げないようにされる。
背後にいる剣城君の息遣いが聴覚を支配する。

思わず意識してしまって体温が上がる。
どっどういう展開ですかこれ!!
というか髪なんか触らせてないしっ男子と接するのが苦手なのにそんなこと出来るわけ、

あっ

……いや

「あの子女の子だよ」
「は?」
「ジャージだから気付かなかったんだ」
「……」

そういえば男の子っぽい友達が髪の毛に虫が引っ付いていたので払ってくれたのを思い出す。
剣城君は抜け殻になったように力無く私から離れる。

「じゃあ俺はっ」
「勘違い」
「っ」
「あっ真っ赤になった」
「……」
「剣城君もやきもち焼くんだね」
「うるさい」
「もっと恋愛に対しては淡白かと思ってた」
「…・…」

好きな人の新たな一面を見れて嬉しくなった私は頬を緩ませながら笑うと剣城君もニヤリと笑った。
ん?ニヤリ?

「俺は独占欲強いから覚悟しとけ」


……


「顔真っ赤だな」
「慣れてないのに何でそういうこと言うの……!!」
「お前に近付く男にデスソード」
「あぁそれはやめてっ」
「あのな」
「うん」
「俺だってな」

恋愛に熱くなることもあるんだよ。


そんな決め台詞置いていって本当にこの人私をどうしたいの!!






(剣城君のばーか!)
(よーしいい度胸だこっちに来い)
(きゃー剣城君かっこい)
(問答無用)
(痛い痛いちょっくすぐったい!!)
(大人しくしろ)
(意地悪!!)




剣城君の笑顔、見たいです。
1年前に書いてたものをupしてみた。何これ。


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