short

□けんかっぷる
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「……」

「……」


ど う し て こ う な っ た

目の前で腕を組み足を組みながらこちらを向こうとしないもみあげカールに腹が立った。
立ったなんて生温い。
今すぐ胸倉掴んではっ倒したい、そんな気分だ。

あぁぁもうややこしいうっとおしい面倒くさい!

基本大雑把な私にはこの沈黙は物凄く堪え難いものだ。
反対に剣城は表情には出さないもの中身はかなり繊細なので何か悶々と考えているだろう。

謝るか?

いや、謝っても「何に対して?」と言われるに違いない。
そう言われると言葉に詰まってしまって逆に機嫌を損ねてしまう。
もう機嫌損ねてますが。つーんって効果音がつく程そっぽ向いてますが。

落ち着け、落ち着くのよ名無し。
優一さんがこういう時は素数を数えればいいんだって言ってたっけ。
えーっと、1・3・5・7・11・13・17え、次何だっけ?

……どうでもいい!!すごくどうでもいい!!



先程から何も発展していない。
この状況を打破するには原因を探り出して謝るしかなくなってしまった。
でも私はまず剣城が何故怒っているのかがわからない。
何も心当たりがない。
強いて言えば普段怒らないところで何が引き金になったのか剣城が怒ったというだけの話だ。
普段怒らない奴が怒るというのは実に恐ろしいものである。

黙っていても仕方ないのでとにかく行動に移してみることにした。


「剣城」
「……」
「私何かした?というか何か言った?」
「……」
「剣城も分かってるようにこんな性格だから言ってくれないとわかんないんだけど」
「…………」

しゅっ


無言で剣城の手元にあったリモコンを投げられた。
鋭い音を立てて私の頬すれすれを通過する。

え、何この子怖い。
すごい怒ってるよね?これ以上に無い程怒ってるよね?
剣城がこんなに怒ってるとこ初めて見たんだけど。
何がいけないの?

私はもう頭がパニックになってしまい視界がぐるぐるした。
うえっ吐きそう。この進展しない状況にイライラする。
え、私怒っていい?この状況に怒っていい?

まず言おう。

「お前は女子か!!」

とりあえずリモコンを投げ返してみる。
剣城は首を傾けるだけで避けられた。
きぃぃぃっ!!むかつくこのスタイリッシュ男!!
ブラコン!もみあげカール!繊細男!制服中二病!
なんていう悪口は口に出さない。だって絶対これ以上機嫌損ねるから。

「……何だと」

あれ?反応した?
女子に反応した?こいつ何に悩んでるの

ここは挑発するのが吉と見た。
後で物凄く怖いことになりそうだけど。

「剣城は彼女に自分の思ってることも言えないんだ。自分で全部自己完結して勝手に納得して楽しい?
 あぁごめん楽しいからそんなことしてるんだよね」

あわぁあっ何今の剣城物凄く怖い!!
あ、何か泣きそう。鋭い眼差しに刺し殺される。
え、本当に泣いていい?ごめん。女子なのは私だよ馬鹿ぁぁぁぁっ!!

泣き始めた私の顔を見て剣城は傷付いたような顔をする。
やだ、泣かせたのは剣城じゃない。自分で勝手に泣いてるんだから。
勝手に自分で怒って勝手に泣き出して、馬鹿なのは自分です。
ごめんこんな彼女で。

「わ…たしっを、不安にさせんなっ馬鹿ああぁっ!!」

傍にあったクッションを剣城の顔に投げつける。
剣城は今度は避けなかった。

え、避けなかった??

剣城は無言のまま倒れてしまった。
まさかクッションにこんな威力があったとは。今度天馬に教えてあげよう。

「つ剣城っ!!ごめんなさいごめんなさい私が悪かった本当にごめん!!」
慌てて駆け寄ってとりあえずクッションをどかそうと手を伸ばしたら強い力で剣城に掴まれた。
わぁぁぁ本当にごめんなさい!!

「ご…ごめん…」
「……」

剣城は黙って私を見つめた後すぐに目をそらした。
……一つ言っていいただろうか。鼻赤いけど大丈夫?

「お前が」
「ん?」
「俺のこと可愛いとか言うから」

え、そんな理由?剣城は可愛いよ?私の自慢の彼氏。カッコよくて可愛いとかどんなに私を夢中にさせたいの。
さらりと言うと剣城は顔を真っ赤にして首を横に振る。
え?だめ?それじゃダメなの?じゃあ何なの。
そんなことを聞く間も無く私は剣城は抱き締めた。どうしたこの展開。



「お前にはかっこよく見られたい」




……


つっ剣城の馬鹿あぁぁっ!!


クッションを再度投げ付けた私の顔は多分剣城と同じで真っ赤だったと思う。





(可愛いのはお前)
(わわわっ、だっだから女子かって怒った時ちょっと反応したのか…)
(……悪い)
(今度から怒る時は何かヒント言ってから黙って)
(そんな余裕ねぇし)








大雑把彼女と繊細彼氏。純情可愛いと思います。怒ってる時は黙っちゃだめだよ!←

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