short

□うそつき
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霧野



「実は俺、女なんだ」
「あ、そう」

彼女に一世一代の嘘をつくと反応は何とも冷たいものだった。
俺泣いていいか。
「じゃあ私の服着る?」とか言われたのでとりあえず反応してくれるまで乗ってみる。
此処まで来たら今日一日嘘をつき通すのが筋なんじゃないかとまで思い始めた。
彼女はタンスから俺に似合いそうな服を選んでいる。ちくしょう真剣な顔もめっちゃかわいい。


仕方ないので着てみることにした。


女の服というのは思ったよりも着るのが難しくて腰当たりが特に着る時になかなか手強い。
俺が渡されたのはワンピース。春らしい花柄のかわいらしいものであいつがこれを着ていると思うと頬が緩む。
今度デートの時に着て来てくれないかなとそわそわしながらチャックと戦う。





「……違和感仕事しろ」
「ですよね」

ふむと彼女は顎に親指をあてながら真顔で感想を述べる。
薄々予想はしていたがやっぱり俺は女顔だ。
鏡を見つめると特に違和感なく俺の顔をした女子がいる。

「やっぱ嫌なもんだな…」
「何が?」
「女顔」
「女じゃないの?」
「あ」


墓穴掘った。
というかこいつは本気で信じていたのか。
「なーんだ残念」と机から飴を取り出してがりがり噛みながらしょんぼりする。
あぁぁあなにこいつ超かわいい……じゃなくて。


「でも蘭ちゃん似合うよ」
「蘭ちゃん言うな」
「きゃー蘭丸君女装似合うー」
「殺すぞ」


おっと俺としたことが。彼女に暴言を吐いてしまうなんてまだまだだな。
当の本人はというと俺に向かって飴を投げた。
飴は俺の髪の毛と同じピンク色で勢いよく口に放り込むと予想以上に甘かった。

「でも蘭丸が男でも女でも楽しいよね」
「どういう意味だそれ」
「女の子だったら放課後カラオケ行って、プリクラ撮って、休日はケーキバイキング行って」
「男でも出来るだろ」

こいつは楽しそうに机にあったボールペンを回している。
何が楽しいんだが。
彼女の脳内はふわふわしていてよくわからない。
なんて思ってると彼女はにやりと狩屋のような笑みを浮かべた。

「恋バナして一緒にお風呂入って一緒に寝てパジャマパーティーして」
「ちょっと待て」
「え?」
「ちょっと待て」


女子ってそんなことするのか?いや恋バナは男子でもするが。
俺の嘘がすごい真実を知らせてくれたような気がする。

「修学旅行とかは一緒の布団で寝たりとかするし」
「女子ってすごいんだな」
「まぁね……でも」


彼女はくすっと笑ってベッドに座っている俺に抱きつく。

「やっぱ蘭丸は男がいいや」
「!!」
「こんなにどきどきするんだもん」






落ち着け霧野蘭丸





俺は漢だ









(やっぱお前かわいすぎる!!)
(蘭丸はこうでなくっちゃ、でもちょっと苦しい)
(今度デートしよう!)









蘭丸が女に見えるけど一番かっこいい。男前。
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