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□午前2時
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皆寝静まってしまった夜中2時のこと。
事件は起こった。

「今日観たホラー番組がいけなかったのか……」

私は寝れずにいた。
正確には起こされた、というべきか。
まさか寝ている間に物音がするとは思わなかった。誰か私の部屋に入ったのだろうか。
……床が軋む音だったので木が伸縮してる音か。そんな音で起こされたのか私。
恐怖心というのは恐ろしい。どうしよう本物だったら。私寝れねぇわ。

と思い台所で水を飲んでいる今に至る。
うわぁ帰りたくないな。でももう誰も起きてないだろうしな。
誰か起きてませんかー。起きてたら喋ろー。

「……いるわけないな夜中だし」
「何がだ?」
「っ」

やややややばいこここ怖っ!!
うわぁぁごめんなさい!!番組見てて「これ絶対ないわー」とか言ってごめんなさいぃっ!!
もういい子にするからだから引っ張らないでぇぇぇっ!!


……




「あ明王っ君」
「今のビビった顔まじかわいい」
「黙って」

後ろを振り向けば明王君がにやにやしながら立っていた。
何で起きてるの。どうしようもう一人の明王とかいう展開だったら。
うわぁぁっ佐久間君ヘルプミー!!鬼道君は夜中に出られると怖いから嫌

「今日観てた番組で寝れねぇだろうなと思って」
「さすが不動明王だね」
「アキオって呼べや」

不動明王って何のお偉いさんだっけ?なんか名前負けしそうだな。
微かに鼻で笑うと明王君は悔しそうに米神に青筋を浮かべる。

「そーか名無しチャンは1人ぼっちの方がいいと」
「ごめんなさいアキオ様」
「わかればいいんだよ」

ぽんぽんと頭を撫でられて安心する。
うわぁ怖いものを見た後は明王君が一家に一台設置されるべきだね。

「一緒に寝て」
「名無しチャン俺は思春期です」
「もう思春期でも何でもいいから怖いの紛らわせろよ!!」

半ば投げやりになって明王君の胸板を叩いてみる。
明王君は面倒くさそうに溜息をつきながらも私をしっかり抱きしめてくれた。
やばい。惚れ直す。

「絶対無理ぃぃ部屋に帰れない……」
「……ったく俺のお姫さんはわがままだねぇ」
「怖がりとおっしゃい」

ちくしょう。人が怖がっているのをいいことに好き放題いいやがって。
もう決めた。明日明王君のお皿にトマト入れてやる。
鬼道君と一緒に朝食頂いちゃう。
苦しめ不動明王。

「ってかそんなに怖いなら観なけりゃいいのに」
「吹雪君にも同じこと言われた」
「それが正論だ」
「ただの怖いものみたさだよ」

もう一度明王君は溜息を吐きながら私の手をしっかりと握りしめて自室へと向かう。
どうやら今日は明王君と一緒に寝れるようだ。心の中でガッツポーズ。
怖い時は誰かと一緒にいるべきだ。やっぱり。

きぃっ

明王君の部屋の扉が開かれ、私は真っ先に今まで明王君が寝ていたベッドにダイブする。
温もりと共に明王君の匂いが鼻腔を擽る。
安心するなぁ。

のろのろと明王君はベッドに入ると私をがっちりとホールドして目を閉じてしまう。
あ、やっぱり眠たかったんだ。
なんだか申し訳ないことしたような気がする。

「明王君……おやすみ」
「ん」


がた



はいごめんなさいっー


廊下で物音がするのは気のせいだろうか。
やめて。まじやめて。
もう私のライフポイント0だから。

「気にせず寝ろ」
「え」
「気にしてるから変な風に聞こえんだよ」
「でも」

明王君はなかなか納得しない私に腹が立ったのか首筋に唇を落とした。
うわぁくすぐったい。

「大丈夫俺がついてる」
「何それ」

明王君は至って落ち着いていて温もりだけが肌伝いに伝わってくる。
落ち着く。もうこのまま寝てしまおう。

「おやすみ名無し」
「おやすみ明王君」

最後にお互いの唇を軽く合わせて私たちは眠りについた。






(そういえばあの音はなんだったんだろう)
(大方鬼道チャンとかじゃねぇの?)
(何故)
(お前らが部屋に入って行くのを見かけたからな)
((そっちの方がホラーだ))





ホラー番組観てしまったので。明王ちゃんかわいい。

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