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□プール掃除
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まだ6月だというのに蝉が疎らに鳴いている。梅雨明けらしい天気だ。
うるせぇなぁと思いながらブラシを意味なく振り回す。
プランクトンが大量についたブラシを振り回すことでもちろん周りには色々と飛び散る。
せっかくだからあいつに飛ばしてみようか。

「ちょっ総ちゃん汚い!」
「あ?聞こえねぇ」
「今真波君とチャンバラしてるんだから邪魔しないで!」
「はぁ?」

名無しと跳沢は真面目にやってるものだと思ったが確かに二人で戦っていた。
跳沢ヒートアップしてんじゃねえよ。女子と男子の力の差のせいか戦況は完全に跳沢が勝っていた。

「名無しちゃんパンツ見えてる」
「奏ちゃん下から覗くな!」
「……何色だったんだ和泉」
「黙って大河君」

このお坊ちゃん顔の二人はというと完璧にサボってやがる。和泉に至ってはブラシすら持っていない。

「というかなんで俺らがプール掃除しなくちゃなんねぇんだよ」
「アフロディ監督が安請けしたからだよ」
「くそあの自称神様め」

口々に文句を言い始める野郎ども。
跳沢もこっちの談話に入ってきた。名無しは楽しそうに1人滑りながら掃除をしている。
制服が汚れることも気にせず緑のヌルヌルの上を裸足で滑って笑っているのを見ると少し心が和んだ。

「何が楽しいんだが」
「俺は楽しいよ名無しちゃんのパンツが見れて」
「お前は黙ってろ」

和泉はもう放っておくことにする。

それにしても暑い。
からっとした天気ではなくじめじめとしているので余計かもしれない。
そうか、髪が邪魔なのか。だが周りをよく見ると髪の長い奴しかいない。
貴志部といい弟といい監督といい……俺といい、木戸川にはやたらと長髪が多い。

「名無しゴム持ってね?」
「え、あー総ちゃん暑い?髪上げようか?」
「頼む」

名無しは器用に自分の右手首からゴムを手に取ると俺の髪の毛に触れる。
……とりあえず緑のアメーバはついてなさそうだな。
一瞬でポニテが出来た。これで暑さは乗り切れそうだ。

今度は貴志部の髪が上げられた。やっぱあいつも暑かったんだな。
和泉も前髪を上げてもらっている。

「じゃあ続きやるぞ」
「おー」
「わっつめたっ」
「暑いと思って」

トラブルメーカー和泉が名無しに思い切りホースの水をかけた。
狙ってやがるなあいつ。案の定名無しの制服はびしょびしょで原型をとどめていなかった。

「ちょっこれ見た目的にやばい」
「いっそのこと水着に着替えるか?」
「持ってないよそんなの」
跳沢が一応心配するが、跳沢も和泉に水をかけられてブチギレたので結局名無しを心配するものはなく、困り果てていた。

「もうそのままやればいいんじゃね?」
「どうせみんな濡れるだろうし」
「そっかじゃあさっさとやっちゃおう!」

流され過ぎだ。


もう何も言葉にしたくなくて溜息しかでてこない。
それをあざ笑うかのように蝉は鳴き続ける。
だからうるせぇって。

「あ、監督からメールだ」
「和泉お前携帯壊れるぞ」
「防水加工のやつだから」
「金持ちめ」

和泉が携帯を操作している間、意気込んだ奴らはまたチャンバラを始めてしまった。
今度は貴志部も加わっているので厄介だ。

お前ら真面目にしろ。

「監督が終わったらなんかおごってくれるって」
「物で釣るのかよ」
「私いちごパフェがいいなぁアイスつきの」
「もっとがっつりしたもんにしね?」

監督恐るべしだな。
単純な奴らはどんどん話が盛り上がっていく。

どこかで結託したらしく急に真面目になりだしせっせと働き始める。

そんな様子を見て俺は溜息しか出てこなかった。




だから蝉うるせぇって。





(ぐだぐだだったけど終わってよかったね)
(本当にぐだぐだだったけどな)
(何食べよう)
(金使わせろ)
(監督の財布ピンチにさせたいよね)








gdgd感が否めない。木戸川大好きです。季節外れが書きたかった。

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