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□約束
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※風介が病んでる








小さい時の約束を私は覚えていた。

あいつは、名無しはいつも誰かと喧嘩をしてる私を慰めてくれた。
口下手でごめんなさいとも謝れない私を、いつもいつも励ましてくれた。
膝を抱えて落ち込んでいる私の隣りに同じように座ってずっと傍にいてくれた。
いつか聞いたことがある。

「君はずっと私の傍にいてくれるのか」

と。
そしたら君は言ったね。

「うん。風介の傍にずっといてあげる」

と。



「風介?」

彼女をきつく強く抱きしめる。
彼女の匂いが鼻腔をくすぐる。
だが、彼女ももうすぐいなくなってしまうのだ。

みんなみんな、ここを出て行ってしまう。

こいつも例外ではなかった。
東京で仕事を見つけたらしく、さすがにここからは通えないためマンションを借りたらしい。
私はと言えば未だにこのお日さま園に執着しているのだ。
ヒロトもお父様の会社を引き継いでもうここにはたまにしか戻っていない。
みんなどこかへ行ってしまった。
学生までは1人で生きていける術を知らないためみんな此処で一緒に暮らした。

名無しはいつも私の傍にいた。
小さい時は一緒に泣いて笑って、
二人で初めて貰ったお小遣いでアイスを買って半分に割ったものだ。
ダイヤモンドダスト時代はマネージャーとして私を支えてくれた。
高校の時あいつは初めて彼氏が出来た。
だが私が思った通りそう長くは続かなくてすぐ別れたのだ。
男に別れるように言ったのは私だから当たり前なのだが。
クラスもずっと一緒で「また一緒だね」と笑ってくれたのに

「君はもう…傍にはいてくれないのか」

虚しく感じる。

お前のいない世界なんていらない。

こんな世界、死んでしまえばいい。

「大丈夫、日曜には帰ってくるから」
「そういう意味じゃない!!!」

私は思わず声を荒げる。
私と離れるというのにこいつはへらへらしている。実に無神経だ。

「風介……おかしいよ、どうしたの?」

声が上擦っている。そんなに私が怖いのか。
私はこんなにお前を愛しているのに。

「ずっとずっと傍にいてくれると約束したじゃないか」


ずっとずっとずっとずっと、ずっと、


私だけの隣に


名無しは何処かで危険を感じたのか私を突き放し、走って逃げようとした。

もちろん、私がそんなの許すわけがない。

「君は私から逃げられないよ」

「風介っ」

「ほら、これでずっと一緒だ」






次の日




彼女は






「おい風介!名無し知らねぇか?」
「知らないね」
「えー……ったく、何処行ったんだよ」

晴矢が頭を掻きながら彼女を探している。
私は知らない素振りをしているだけにも気付かないでお日さま園の中をうろうろしている。



当然じゃないか


彼女は





「何処かへ消えてしまったんじゃないかな」






(はぁ?どういう意味だよ)
(察してくれ)
(察しろって……)
(もう、ここにはいないんだ)








最後の解釈はお好きなように。1年前ぐらいに書いたのをupしました。

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