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□ばれんたいん
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雪村


「ということでお前のチョコはねぇから」
「ちょっと待て」

突然笑顔で彼女に「お前の席ねぇから」的なことを言われて俺は無償に腹がたった。
更に俺をイラつかせたいのか俺の席に足を組んで堂々と座って頬杖をついている。

こいつ本気で喧嘩売ってるのか

その苛立ちを抱えきれないほどのチョコにぶつけてみる。
彼女に向かって2、3個投げてみた。
あいつは器用にも驚きながら床に落とすことなく手と足と腕を使ってキャッチした。
やっぱり凄い女だと思う。

「ちょっと雪村!せっかく心をこめて作ったものを投げない!」
「はぁ?別にいいだろ」

正直、好きでもない奴にチョコをもらうのは気が引けた。だが隣りにいる木瀧が俺を睨むのでもらうしかなかったのだ。
おかげで今日のイベントが始まってから30分で俺はありとあらゆる女子からチョコをもらってやっと教室についたのだ。
吹雪先輩じゃあるまいしと思いながらたどり着いたら彼女がこれだ。
俺は本気でどこに怒りをぶつければいい。

「雪村はわかってないなぁ……」
「吹雪先輩みたいに女の扱いはうまくないんですー」

俺は机の中を確認するとやはり4・5個入っていた。
ご丁寧に手紙まで付いているやつもある。
まぁこんだけ贈られるのはこのふんぞり返っている女と付き合っていることを公表してないからだろうと溜息をつき、手紙をゴミ箱に捨てようとする。
彼女は怒ったように手紙を取り上げ俺に押し付けた。

「いくら雪村が好きじゃなくともやっぱりそれは失礼だ」
「じゃあどうしろってんだよ」

確かに彼女は真面目なのはいいところだが…さすがにこの場ではただの理不尽にしか聞こえない。
「ちゃんと食べるか返すかしてきてください」
この量をか?無茶言うなよ、とでも言ってやりたかったが彼女があまりにも真っ直ぐな目だったので俺は思わずすくんでしまう。

「わかったよ」
「よし」
「その代わり」
「うん?」

彼女の机をちらりと横目で見る。
学校指定の鞄から箱が少し飛び出していた。

「あれ俺にくれよ」






俺はお前の愛しかいらない。

(馬鹿村)
(なんでけなされなきゃいけねぇんだよ)
(あげるよ馬鹿村)
(しつけぇよ)



VS真面目。うちの雪村は無器用で冷めてます。
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