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□ベッド
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「……剣城君」
「……」
重い。とりあえず重い。
剣城君がなんだかおかしい。
今日は剣城君の家でデート……という名のごろごろタイムだったのだが、
どういうわけか剣城君はサッカー雑誌を見て寝転がっている私の上に乗っかってきた。お前自分の身長と実は筋肉むきむきなのを知らないのか。
それどころか私のお腹周りに腕をからめてきてぎゅっとされた。
その後眠たいのか甘えたいのか私の肩に自分の頭を預ける。
どうした剣城京介。
「剣城君?」
「いい匂いがするな……」
どうやら彼は重症なようです。
シャンプーの匂いなのだろうか。剣城君は私の髪に顔を押し付ける。
正直言うと、くすぐったい。思わず身を捩る。
剣城君はそれに気をよくしたのか、耳に唇を寄せる。
「ちょっタンマっ」
「やめない」
背後からくつくつと意地悪そうな笑い声が聞こえる。
くそう屈辱的だ。私は投げやりに剣城君の匂いがする枕に顔を埋めた。
すると剣城君は何を思ったのか私の背中に人差し指を這わせる。
「ひっ」
「色気のねぇ声」
「うっさ……いっ」
あまりのくすぐったさにシーツをぎゅっと掴む。
耳に剣城君の甘い吐息がかかる。うわぁえろい。
私の目からは生理的な涙が出てきて、視界が滲んできた。
「泣いてんじゃねぇよ」
「無理っ……くすぐったい」
ちゅっと首筋にキスを落とされる。それがまたくすぐったくて。
剣城君の髪が首筋にかかった時にこれ以上は限界だと思った。
私は無理やり身体を反転させ、剣城君と向き合う。
「やっとこっち向いた」
「構ってちゃんか」
「ちょっとそういう気分になっただけだ」
剣城は私の頬に手を添え、米神にキスを落とす。
彼はたまに甘えたくなる時があるらしい。
普段ツンツンしているせいなのか大人ぶっているからなのか。
「いい加減にしないと髪解くよ」
「やれば?」
必死の抵抗を真顔で返されたので私は苛立ちを覚え、剣城君のポニーテールに手をかける。
固定してあるゴムを解くと、剣城君の長い髪が私の顔にかかる。
うわっこれは失敗した。さらにくすぐったいパターンだ。
剣城君はそのことをわかっていたようでにやりと口角を上げる。
悪役面とはこのことを言うのだろう。
「名無しは馬鹿だよな」
「剣城君はただのツンデレだよね」
「…………」
「ちょっ何、痛っ」
言い返されたのが悔しかったのか剣城君は私の首筋に顔を埋め、私の首を噛んだ。やることがまるで吸血鬼のようだ。
当然、八重歯で噛み付かれた私の首には鬱血した跡が残る。これなんて暴力?
「私怒っていい?」
「だめだ」
怒ることすら許されないのか。私が目をつぶって溜め息をつくとチャンスだと思ったのか唇を塞がれた。
これはやばい。このままアレな展開に持っていかれるとややこしいことになる。
だが剣城君は完全にその気らしくさっきから手がどんどん下に下がっていっていて今は太腿に到達してしまった。
少し剣城君の肩を押してみた。だが逆効果だったようでキスは更に深くなっていく。
まずい。思考が溶けてくる。
一度解放してくれたと思ったらまた啄ばむようなキスから始まり、息を吐きながら深い深いキスをする。
今日の彼を止めることは不可能かもしれない。
私は半ば諦め、剣城君にされるがままになった。
(本当に中学生ですか……)
(至って健全な中学生です)
(なんでこっちに近付いてくんの、じりじり来んな)
剣城さんがただの変態。