short

□世話焼き
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佐久間次郎という男は実に我儘だと思う。
というのも私が幼馴染だからなのか源田が私を甘やかすからか自然と私が佐久間を甘やかすことになってしまっている。
源田からすれば私を妹のように猫かわいがりしているから仕方ないのかもしれないが。

とにかく佐久間は私に頼めばなんでもしてくれると思っているらしい。

「名無しー俺朝弱いから携帯で起こしてくれ」
「名無しーしょうがねぇから一緒に学校行ってやるよ」
「名無しー購買行くんだったらメロンパン買ってきてくれ」
「宿題写させて」
「お昼一緒に食べようぜ」
「サッカー部今日見に来てくれよ」
「腹減った、コンビニでなんか奢って」
「名無し」
「名無しー」


……正直ちょっとウザイと思ってしまう今日この頃。


普通幼馴染というものは中学生に上がるとなんだか恥ずかしくなって話すことすらやめてしまうものなはずだ。
私は少なくとも小学生の時はそう思っていた。
だがどうだ、うちのとこの二人は全く逆だ。
寧ろ中学に上がってから過保護になった気がする。
源田に至っては「彼氏なんてお父さんは認めません!」とまで言われた。まぁお前誰だって話ですよね。

そして佐久間。
昔から源田が私の世話を焼いて私が佐久間の世話を焼くといった関係が出来上がっていたが最近特に酷い気がする。
酷くなったのはいつ頃だろうか。私が中学入って初めて彼氏が出来たあたりだろう。
まぁその彼氏とはすぐ別れたけど。



「名無し」

ほらまた来た。佐久間はこれから部活があるのかスポーツバックを肩にかけながらこちらに歩み寄ってきた。
私はというと教室で提出物の確認をしていて自分の周りにはもう誰もいなかったのだ。
何この密室空間。私に何処からか危険信号が送られてくるような気がする。
「何?これから部活でしょ」

「さっさと行っといで」と適当にあしらうと佐久間は少し眉を吊り上げてムッとした顔になる。
よく感情が顔に出る子だ。

「なぁ、今日部活帰りに一緒に帰ろうぜ」
「……時間があったらね」

とかいいつつ多分私は佐久間をじっと待つことになるだろう。くそう。こんな甘い自分に腹が立つ。
佐久間は「そうか」と少し嬉しそうに呟き軽い足取りで部室へと向かう。
途中何かを思い出したように声をあげ私の方にぶんぶんと手を振ってくれる佐久間を見ると腹立たしさもどこかへ行ってしまった。




「ということなんで見学させて鬼道君」
「何がということなんだ」
グラウンドの観客席に座る私を帝国サッカー部の皆さんはさほど気にしていないのかそれても鬼道君が気にしすぎなのか、
まぁとにかくなんとも微妙な顔をされた。
源田に至っては先程からちらちらとこちらを見てくるし、佐久間は何処か張り切っている。
というか源田お前練習に集中しろ。

「まぁ部活終わったらすぐいなくなるから」
「そうか」

鬼道君は諦めたように返事をする。
なんだかんだでこの人はすごくいい人だと思う。佐久間が尊敬するだけのことはある。
鬼道君はいつの間にか練習に戻っていた。
代わりに一度休憩を取りに来た佐久間がやってきた。
つかつかと私を一直線に目指して歩いてくる。

「名無し」

またか、次は何なんですか我儘王子

佐久間の目は何故かひどく真っ直ぐだった。
急に真面目な顔をするものだから私は訳がわからないと一蹴してしまいたかったが、
雰囲気的にそうすることは許されず「何?」とまた聞き返してしまった。

「次、俺シュート決めるから見といてくれよな!」

本当に、私に懐きすぎじゃないのか。こいつ。
佐久間は普段人には見せないような笑顔をこちらに向けた。
私は思わず顔が綻んでしまう。
お互い依存しているのには変わりないってか。


「いいよ」
「だから充電させろ」

「…………何この状況」

佐久間が何を思ったのか

抱きついてきた

どうした佐久間

急なことだったので特に身動きは取れず、佐久間にされるがままになった。
その瞬間鬼道君に大声で怒鳴られて成神君にはやし立てられて少し困ったのはいうまでもない。

源田がボールを一個ダメにしたのには少し驚いた。




どうやらうちの佐久間は私のことが好きなようです。






(いや何か反応してやれ)
(え?なんで?)
(こいつ佐久間が恋愛感情だってこと気付いてないな)
(は?)
(なんでもない(大変だな…))




佐久間君が我儘。もっと甘いの書きたい気がする。

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