白竜と

□花
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名無しが行きたいといっていたのは新しく出来た雑貨屋のようだ。
俺には理解できないものがたくさんあって見ていてもあまり楽しいものではない。
だがやはり女の性というものだろうか、名無しは目を光らせてどっちにしようかあれはどうだこれはどうだとふらふら何処かへ消えてしまった。
おかげで俺はこちらをちらちらと見てくる女どもを押しのけて名無しを探す羽目になる。
どういうことだ名無し……!!
俺が女の扱いに慣れてないと知っての悪態か!
改めて感じるがこの間の女といい見てくる奴等といいどうにもあいつらはクールで顔がいい男が好きなようだ。
名無し曰く少し影があって悪そうな男が一番好かれるんだそうだ。
一方男共は女子の顔しか見ていない。隣のクラスの奴が可愛いとかあいつは可愛いがアホだとか、碌な話題はない。
剣城曰く男子はそういう生き物なんだそうだ。
ゴッドエデンでは名無ししか女が居なかったから恋愛話もなかった俺には十分なカルチャーショックだ。

「そういえば……」

名無しの頭には最近髪飾りが増えた気がする。
周りの影響だろうか。前まで何も手を加えなかった髪だが今ではリボンを付けたりよくわからん飾りのついたゴムをつけたりしている。
髪が伸びてきたこともあるのだろう。今度美容院に行かなければ、とも言っていた気がする。

「確かサッカーする時用のゴムが欲しいとかなんとか…」

一度思いついてしまった案は俺から脅威の行動力を生み出させる。
きょろきょろと周りを見渡すと目当ての物があったので名無しが周りに居ないことを確認し、手に取る。

「あいつに似合う色は何だろうか」

名無しは何色でも似合う。
シュウは名無しに黒系の物を付けさせたがり、剣城は赤や紫系を勧める。
皆何故自分のカラーを付けさせたがるんだと嘲笑いたくなったがどうやら俺も例外ではなかったらしい。
俺は白い花がついたゴムに目がいく。








今日の買い物に満足したのか名無しは嬉しそうに鼻歌を歌いながら帰宅した。
帰りの電車では俺の肩に寄りかかって寝るという可愛らしさを見せてくれたが、今の後ろ姿も相当俺の心を擽らせる。
だがさぁ夕食を作るぞと気合いを入れる声が聞こえたので俺は焦りながらおいと呼び止めた。


「え?」
「俺からだ、受け取れ」
「これってあのお店……」
「そうだ」

お互い何故か黙り込んでしまう。
名無しはこの空気に耐えれなくなって「ありがとう」と言い俺の手にある物を受け取る。
震える手で包装した袋のテープを開けていく。
俺もその雰囲気にのまれて顔が熱くなってしまう。

「……これ」
「いっいらなかったら他の奴にでもあげればっ」
「!!ありがとう!絶対付ける!!」

名無しは普段見せない笑顔を俺に向けた。
俺は思わず息を呑んだ。
今までで見たことがない笑顔だ。
余程嬉しかったのか自分の髪に翳してくるくると回り出して「似合う?」と俺に再び笑顔を向けてくる。
おっお前っお前って奴は……っ


「俺の天使だぁぁぁぁっ!!!」
「えっちょっ何白竜!!頭おかしくなったの!?」

俺が勢いよく抱きつけば名無しはいきなりのことで立ってられなくなり床に音をたてて倒れ込んだ。
それでも俺が抱きつくことをやめないのでジタバタと暴れ始める。

「名無し可愛い」
「可愛くない離せ上から降りろ」
「折角のおいしい展開を邪魔するのか!!」
「白竜」

さぁっと周りに冷たい空気が流れる。
それを合図に俺はすぐさま名無しから離れる。
今名無しはそんな気分ではないのだろう。だがそこで諦める俺ではない。

「名無し」
「駄目」
「名無し……」
「くどい」
「名無しっ!!」
「今日はもうご飯作らないっ」

名無しは遂に怒って出て行ってしまった。
少しやりすぎたか、俺は少し心の中で反省する。
だが俺の中では勝機が見えていた。


名無しの耳が赤かったから。




次の日の朝練で早速髪飾りを付けてくれていた名無しに俺は悶えずには居られなかった。










(うわぁぁっ何であの時止めたんだろう…)
(いやいやいやそういうことしたいわけじゃないよ!!でもまだ早いんじゃ)
(て何それ!!)
(あぁぁもうわけわかんない)
(いやっでも白竜っ)
(…………髪飾り可愛いな)








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純情っぽくしてみた。喧嘩の後なので微甘ぐらいで。
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