白竜と

□花
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今日は約束の日曜日。提出物も全て土曜の夜寝そうになりながら頑張ったというのに、名無しは炬燵から動こうとしない。
もうすぐ昼になるんだが……動く気は無いのか。
だがごろごろしててリラックスモードの名無しはその……

「かわいい……」
「写メ撮らないでくれますか」

少しボサついた髪にふわふわしたセーターの名無しは予想以上に俺にダイレクトアタックを決め、思わずあらゆる角度から写メを撮ってしまった。
これでまた名無しフォルダが増えることに究極の喜びを感じる。
この間互いの愛を確認し合ったというのに名無しは今までと何ら変わらない。
自然のままの名無しが勿論一番可愛いがもう少し俺に頼ってくれないだろうか。

「こんなに俺は好きだというのに…」
「え、何て?」
「いやこちらの話だ」
「ふーん」

名無しはよっこいしょと女子からぬ掛け声で立ちあがりゆっくりとリビングから出る。
不思議に思った俺は名無しのあとをつける。
何だ何だその格好で外に行くのか!やめておけっそんな無防備な格好で行くと襲われかねん!
何?違う?じゃあ何だと言うんだ!

「着替えるから入ってくるの禁止」


締め出された。

どうやら名無しはデートのために着替えるらしい。
俺はそれだけで頬が緩んでしまってだらしのない声を出して笑う。
歓喜極まって床でごろごろと笑いながら転げていたら名無しにうるさいと叱られた。
全く素直じゃない奴め!そんなところも可愛げがあっていいがな!
だがこれ以上怒られるのは嫌なので俺も着替えることにする。
今日は寒いからこの間買った白いコートを羽織ることに決めるとそわそわしながらリビングに戻る。
別に期待してるわけじゃないぞ!あいつの私服は見飽きているからな!!
断じて俺は今日のデートを意識しているわけじゃ

「白竜何処見てんの」

……

俺は今日この日に感謝する!!


「なっなかなか似合うな!!」
「そう?思い切って買ってよかった」
「?新しいやつか?」
「うん、この間の水曜日に買った」
表情の変化は相変わらず乏しい名無しだが恥ずかしながら俺との視線を外す。
少し耳が赤くなっているのでもしやデートのために買ったんじゃと期待をしてしまい思わず抱きついてしまった。
白いポンチョがもふもふしていて手触りが気持ちいい。
名無しは少し焦ったようだが「はいはい」と俺ごと移動し始めた。
名無し……っ何てたくましい子なんだ!!
そのまま何と外へ出て駅へ向かい電車に乗る。
電車の中でお昼は外で済ませることになり何を食べるか議論し合い、結局無難なパスタになった。







「よく食べたな」
「私もびっくりした」
俺は成長期ということもあって人より量は食べるが名無しもなかなか食べていた。
元々ゴッドエデンで男子と同じ量を食べさせられていたためよく食べることは予想していたが下手したら剣城位食べるんではないだろうか。
「牙山さんから食べるのもトレーニングって教わったから身に付いちゃって」
「よく食べる奴は好きだ!」
「うんありがとう」
また流された。
こいつ本当は俺のことが好きなんだろうか。
やっぱり弟としか思われないとか言われたら俺はショックで立ち直れない。
名無しはどちらかと言えば無口な方だ。
他の女のようにすぐに言葉が出てくるわけではない。
それも踏まえてこいつと付き合っているがたまに不安に感じる。
この間の告白で少しは素直になるんではないかと期待していたがどうやらまだまだのようだ。

「やっぱり駄目なのか」
「白竜」
「?」

名無しに名を呼ばれたと思ったら急に手を掴まれて指が絡んできた。
これはつまり、こ、こっ、
「恋人繋ぎ……っ!!」
「どうしようこの子泣きだした」
「おっ俺は今っ猛烈に感動している!!」
「はいはい取り敢えず泣き止んで」
名無しの精一杯の行動だったのだろう。
彼女の急激な進歩に俺は思わず涙を流しながら感動してしまった。
こいつが!!名無しが自分から手を繋いで、しかも恋人繋ぎで!!

「名無し!!今日はお前の好きなところへ行こう!」
「えっ白竜の好きなところでいいよ」
「いいやお前の好きなところで!!」
「どうしたのこの子」

名無しはいつも俺の買い物に付き合っているので今日の俺の様子に驚いたのだろう。
繋いだ手を離そうとした。
だが俺がそれを許すはずもなく名無しの片手を両手で包みこみ顔を近付ける。
こ、これは恋人っぽいのではないだろうか!とドキドキしていたが名無しは「場所を考えろ」と冷たい目で俺を見下した。
その視線に少しドキドキしたがこの気持ちは一体何なのだろう。

「じゃあちょっと歩くけど」
「何処でもいいぞ!何なら俺がお姫様だっこで」
「場 所 を 考 え ろ」


笑顔で制された。
これには俺も背筋が凍らずにはいられなかった。
今一瞬名無しの笑顔がシュウと被ったのだが、俺の気のせいだろうか。
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