白竜と

□再び
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白竜に近付いていって私は勢いよく頭を下げる。白竜も静かに頭を下げた。
とにかく理由を話さなければと決心したところで顔を上げると白竜の真面目な顔が目の前に映った。
え、白竜が先に言っちゃうの。私が先に言うもんじゃないの。
面喰ってしまって行動に移せずにいると白竜は私の手を握って顔を近づけた。
え、何近い。

「神童先輩が好きなのか」
「え……何それ初耳」
「本当なんだな!?」
「どうしてそうなった、そんなわけないでしょ」
「そうか……」

白竜は確認がとれたことに安心したのか私の手を握りしめる力を強くし、そのまま私の身体を自分の方へと引き寄せる。
白竜と地面に倒れてしまうことを覚悟した私は目を瞑ったが、どれだけ待っても痛みを伴うことはなかった。
恐る恐る目を開けてみると白竜の白いふわふわの髪が目の前に現れる。
白竜も走ってきたのだろうか、少し汗の匂いがした。
だが何故か、嫌な感じはせず寧ろ安心した。
だからかもしれない。視界がどんどんとぼやけてきて光しか認識出来なくなった。


「名無し……お前泣いてっ」
「違う」
「いや…だが…」
「これは自分を戒めるものだから気にしないで」

白竜はゴッドエデンの過酷な特訓でも涙一つ流さなかった私が泣き始めたので驚いたのだろう。
そんなに驚かなくても、一番驚いているのは本人である私なのに。
あたふたと焦りの色が行動で分かり、一度身体を離そうとする。
だが私が服の裾を掴んでそうさせなかった。
白竜にはまだまだ言わなければいけないことがあるのに、伝えないで泣くだけでは勿体ない。
鼻を啜りながら擦れた声で白竜に思いを伝える。

「白竜一度しか言わない」
「!……あぁ」
「私妬いてた、かもしれない」
「……えっ」
「いやニヤニヤしないで」
「すまんっついっ」

普段白竜が妬くことが多かったので余程嬉しかったのか白竜は私の言葉を聞いた瞬間頬が完全に緩みきった。
人が真面目な話してんのに何してんのこの馬鹿王子……っ!!
だがこれで白竜が私を嫌ってないことは明確だ。
それが確認出来ただけで私の心は少し浮ついた。

「もらったラブレター見ないで破ったでしょ」
「あぁ」
「それを繰り返してたら白竜を好きな人は諦めることが出来なくてそれがどんどん増えていっていつか誰かにとられちゃうんじゃないかって不安だった」
「……あぁ」
「そんなことを思ってしまう自分が嫌で白竜に八つ当たりしてた、ごめん」
「それを言うなら俺だってっ」
「うん、わかってる」

今回の件は私は勿論、白竜にだって悪かった所はあったはずだ。
それがわかってるから、私は白竜の自分を戒める言葉を否定しない。
白竜はまさか肯定するとは思わなくて言葉に迷っていた。
それをいいことに私は自分の話をどんどん進める。


「好きだよ白竜」


白竜を抱きしめると白竜の身体は強張ったのが感じられた。
多分彼の顔は今真っ赤だろう。
口をパクパクさせてそれから、

「おっ俺も好きだ」
「うん」
「もっと俺を頼ってくれ」
「うん」
「俺から離れないでくれ」
「うん」
「俺を、好きでいてくれ」
「うん」
「俺に甘えてくれ」
「……うん」
「それから」
「……ちょっと注文多いかな」

流石に私にも限度ってものがある。これ以上のことを守ろうと思ったら私生活に支障がきたす。
そのことを告げると白竜は「俺のことが好きじゃなかったのか!!」と涙目で私の身体を揺らす。
うぇっ気持ち悪い、揺らすな。
やめてくれと言わんばかりに私は足元にあったサッカーボールを蹴りあげる。
白竜はそれを自慢の反射神経で受け止める。

白竜が意地悪そうに、笑った。


「ほぉ……いい度胸だな名無し」
その勝ち誇ったような笑顔に私はしまったと思い一歩後ずさりするがこちらももう引けなくなった。
「負けた方が勝った方の言うこと聞くってのはどう?」
「成程、俺が勝ったら今日はイチャイチャサービスデーだ!」
「はぁ」
「それから今度の日曜日にデートしてもらう!」
「何処からツッコめばいいの、それともツッコんじゃだめなの」
「行くぞ!」
「いきなり滑りだすとか本気すぎる」

どうやら、白竜は私に構ってほしかったようで本気で挑んでくる。
一点先にゴールを決めた方が勝ちなのでこれは完全に私が不利だ。

「だけど、一度奪ってしまえばこっちのもの!」
「何っ」
「甘いよ!」
「ふんっ相変わらずだな!」


「……」

ふと横目でベンチの方を見るとシュウが笑顔でこちらを見ていた。
口が動いていたので何か喋っているのかと思って注意してみるが何も聞こえない。
そうしている間に白竜にボールを奪われたのでまたそちらに集中させられた。
だからシュウの言葉は聞こえなかったのだ。


次の日からシュウは私達の目の前に現れることは無かった。





(ねぇ、知ってる?)
(名無しは幸せにならなくちゃいけないんだよ)
(白竜は名無しと幸せにならなくちゃ)
(だって二人は)
(僕の親友でしょ?)
(ありがとう、僕に仲間という絆を教えてくれて)
(ありがとう、愛を教えてくれて)
(これで僕は)
(安心してあの島を守ることが出来る)







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シュウ君はまた登場する予定。結局勝負は白竜が勝ちました。次はデート編だよ!何かもう文めちゃくちゃだよ!
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