白竜と

□喧嘩
1ページ/2ページ


何故だ。
何故こいつが俺と一緒に登校してるんだ。

一緒に名無しがついているならまだしも今日はあいつはいないようだ。
この馬鹿にそれを聞くとこの世の終わりのような顔をしたのでも聞かないことにする。

取りあえずイナッターに「白竜が落ち込んでいる」と書き込んだら松風が走ってきた。
流石はお節介。行動が速い。

「白竜どうしたの?何かあった?」
「ふっ俺も落ちぶれたもんだなお前如きに心配してもらうなど」
「じゃあいいや!」
「ちょっと待て」

松風、何てお前は策士なんだ。お前という奴は。
白竜が見栄を張るもの無視されると急に必死になる特性を生かしたな。
恐るべし松風。伊達に革命児を名乗っていない。

「また名無し先輩のことでしょ」
「はっさては貴様エスパーだな!!」
「……剣城、白竜って馬鹿なの?」
「俺に聞くな」

相変わらずこいつの馬鹿っぷりには困ったもんだ。
白竜の悩みの種は基本的に名無し。どんだけ好きなんだ。
同居していることすら憎たらしいのにあいつと一悶着起こせることがまた腹立つ。
その席俺に譲れ。代われ。

「何したの?」
「聞きたいか?」
「いいよ別に」
「聞いてくれ」
「うんわかった」

松風は完全に白竜の扱いに慣れたようですらすらと話を進めていく。
若干その様子に引いたが早く話が聞きたかったので黙っておいた。
松風がこちらを見てニコニコ笑っているのに気付き「何だ」と言うと「この名無し先輩馬鹿」と言われて腹が立つ。
その口閉じろ。


「事件は昨日起こった……」



久しぶりに部活が休みで俺は名無しと帰ろうと思っていたのだが隣のクラスの奴に呼び出された。
重要なことではいけないので名無しに断りを入れて指定場所に向かった。
そもそもそれがいけなかったのかもしれない。
呼び出された場所に向かうと女が数人立っていてその中の1人の女に手紙を渡された。
周りの奴等は口々に囃したてる。貴様ら何をしに来たんだと言いたかった俺だって大人だ。黙っておくことにした。
その後特に何もなかったので帰路についたのだ。
家に着くと名無しは炬燵に入ってテレビを見ていた。

「白竜おかえり」
「あぁ」
「……」
「どうした?」
名無しは無言で俺の鞄を見つめていた。
視線の先を見ると先程女から貰った手紙が顔を覗かせている。
大方俺がこんな女の子らしいものを持っているのに驚いたのだろう。
「あぁラブレターか」
「らぶれたぁ?」
「あれ知らない?好きな子に自分の思いを書いて渡す手紙」
「……そうか」

俺は何て無意味なことをする奴等だと憤った。好きなら直接言えばいいだけの話だろう。
何故こんなまどろっこしいことをするのだ。
可愛らしく飾られた手紙が急に憎い敵に見えた。

「読む価値もない」

俺には名無しがいる。
どんなに情熱的な言葉を並べようとあの女に翻るつもりはない。
だから無意味なのだ。
ということでその手紙を破ってやった。

その瞬間名無しは顔を顰めた。
具合でも悪いのかと思って聞くと名無しは笑顔で何でもないと言ったがそれから全く喋らなかった。
やはり具合が悪いのか、それとも俺の行いがよくなかったのか。
だが俺には今日は名無しが怒りそうなことは全くしていない。
今日も俺は実に品行方正に過ごした。
朝ご飯は俺が担当だったが完璧な目玉焼きを作った。
テストもクラスでトップだった。
お昼も名無しとは問題なかった。
名無しのクラスに連絡しに行った時もだ。
……大丈夫だ。問題ない。

一体あいつは何に怒っている。





「「ちょっと待て」」

俺と松風はその話を聞いて突っ込まざるを得なかった。
ちょっと待てどころではない。大分待てだ。
明らかに名無しが怒っている原因はラブレターを破り捨てたことだ。
何故気付かない白竜。お前の脳味噌は腐っているのか。

「白竜って究極に馬鹿なんだね」
「そうだ俺は究極だ」
「褒めてねぇよ」

こいつと居ると非常に疲れる。
仕方ないので学校に着いたら先に行ってるはずの名無しに理由を確かめておこう。
あいつがいいんだったら白竜に理由を教えれる。
何よりこの空気のまま部活に来られても困る。
今日の朝練がなくて本当によかったと思う。






教室まで理由を聞きに行ったのに名無しはとんでもなく無表情な顔で

「わかってないなら教えなくていいよ」

と言われた。
だが原因はラブレターを破り捨てたことだというのは肯定された。


早く気付け馬鹿竜……!!
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ