白竜と

□イナッター
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最近霧野君や浜野君のおかげで大分携帯の扱いが慣れてきた。
これを期にと教えてくれたのが雷門サッカー部員でやっているイナッターというものだ。
正直ブログまでの世代しか知らなかったので私には酷くカルチャーショックだった。
一種の掲示板のようなものだろうか。
とにかく

ちょっと楽しい今日この頃。



ななし
突撃隣りの晩ごはん!

ななし
今日の皆の晩ご飯を聞いてみたいと思います。



よし完了。現在お昼休み。
今頃みんな携帯片手にお昼ご飯を食べている頃だろう。
あ、浜野君が携帯いじってる。
彼の携帯は所謂スマートフォンというものらしくするすると片手で操作してるのを見ると世も情報社会だなと実感させられる。
そうしているとリプが表示された。
あれ?これってそういうんだっけ?未だに携帯もイナッターも使い慣れていないせいか携帯用語がよくわからない。



天馬 ▶@ななし
秋姉特製のエビフライ!

西園 ▶@ななし
チンジャオロース!

狩屋 ▶@ななし
カレー

浜野 ▶@ななし
やっぱ塩サバっしょ!!

剣城 ▶@ななし
今日はカツ




「…………かわいいな」
「なーにななし」
「わっ」

ご飯をつつきながらぼそっと呟くと先程書き込みがあった浜野君が背後から顔をのぞかせてきた。
いつの間にか私の机で倉間君がずかずかと弁当を広げ、速水君が申し訳なさそうに弁当を開いている。
つまり三方向の逃走経路をふさがれたわけだ。
何これ新手のいじめ?

「倉間君私白竜のとこ行かないと」
「ふーん、で?」
「君も最近私いじめ酷いよね」

倉間君がさほど興味なさそうに購買で売っている焼きそばパンを頬張っていた。
浜野君には「卵焼きじゃんもらいー!」と奪われてしまった。
何このジャイアン。
速水君は心配そうにこちらをちらちら見ているけど特に何をするわけでもなくとにかく見ていた。

「狩屋君と白竜にどやされるな…」
半ば諦めながら肉巻きを頬張る。
お、今日これ自信作じゃないか。
なんて思っていたら浜野君が「ななし自分で作ってるとか超えらーい」と褒めてくれた。ちょっと嬉しかったりもする。
倉間君には「飴ちゃんやろう」と言われて手を出すと蜂蜜生姜味だったので思わずふいてしまった。
たまにはクラスメイトと食べるのも悪くないかもしれない。

なんていう平和な一ページは一瞬にして粉砕された。

「名無し!!今日の夕飯はハンバーグで頼む!!」
「空気を呼んで白竜」


下手したら二年の全クラスに聞こえているのではないかという位白竜は大声で私に叫んだ。
まるで道場破りのようにずかずかと入ってくるのでクラスメイトたちは目が点になってるのを私は察した。

「おう白竜じゃーんどしたの?」
「イナッターで名無しが夕飯のメニューを聞いていたからな、ですね」
「敬語下手すぎだろお前」

白竜の馬鹿っぷりに慣れたように返す浜野君や倉間君を見ると時の流れを感じる。
速水君はいつも通り焦っているけどそれはそれでよしとしよう。

「名無し」
「あれ?剣城君」

白竜の横からしかめっ面の剣城君が顔を覗かせた。
成程。白竜に無理やり連れてこられたパターンだな。かわいそうに。
「せーんぱい!」
「おい狩屋!!」

トラブルメーカー狩屋君が現れた。
狩屋君は私にタックルしようとしたが白竜がきっと睨むと狩屋君の首根っこを掴む。
こ怖っ……どちらも獲物を狩るような目だった。

「何すんの白竜君」
「名無しは俺のだ」
「略奪愛って素敵だと思わない?」

ばちばち二人の間に火花が散る。私の前で堂々とそういうこと言うのはやめてくれないかな。
呆れながら春雨をすすると剣城君が無言で卵焼きを掴む。了解を得てください。

「どういうことなの剣城君?」
「こういうことだ名無しちゃん?」

もう嫌だ。この人達。
私は癒しを求めて携帯を開く。



ななし
クラスが荒れてるなう。
助ケ求ム


しばらくしてイナッターが更新された。





神童 ▶@ななし
助けに行く




……え?
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