白竜と

□サッカー
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「俺は白竜、ポジションはFWだ」
「ななし名無しです…ぽポジションはDF…MFだったりもします」

どうしよう。

皆さんの視線がすごく痛い。



結局浜野君たちに「とりあえず一緒に来いよ!」と誘拐され、サッカー部員たちの前で自己紹介が始まる。
白竜はラスボスなのに胸を張ってどや顔で自己紹介するので私は縮こまるしかなかった。

白竜どんだけ厚かましいの……

「ななし……」
「し新藤君……」
「神童だ」

漢字間違ってた、てかなんで漢字わかるの。
神童君の顔がまともに見れなかった。
これは土下座の勢いで謝るべきなのか、
そんなことをしたら剣城に笑われ白竜に爆笑され狩屋君に背中を蹴られそうだ。

なんか一年ズが酷い

「今日からお前たちの仲間になる」
「今までのことは水に流してくれ」
円堂監督と鬼道コーチが選手たちにフォローをするが納得している人たちとそうでない人たちと理解してない人たちと
三方向に分かれていた。

「って言ってもなぁ……」
「あんなことがあったわけだし」
「信じられないド」
「というか名無しってやつは神童の足もう少しで潰すところだったしな」

やっぱり私は神童君のネタになると快く迎えられてないらしい。
特に神童君とよくいるミスト君?に至っては私を睨んでいる。
これにはさすがの私も涙目だ。

「あー……白竜、やっぱ私やめとくわ」
「何故だ!」
「俺は名無し先輩に入ってほしいです!」
「僕あのDF技見たいです!」
「俺も参考にさせてほしいです(遊び相手が減る)」

松風君…西園君…狩屋君…(狩屋あとでてめぇ殺す)
剣城君も微かに頷いていた。
浜野君たちは状況を全く理解していなかったが「ちゅーかよくわかんないけど神童がよければいいんじゃね?」と軽く言葉を放った。

これは本当に土下座の勢いで神童君に謝るしかないんだろうな。

「神童君」
「なんだ」

私は気に食わなかったがけじめをつけるのが道理だと思ったのでグラウンドの地面に正座で座る。

「足潰そうとしたこと、ごめんなさい」

丁寧に両手を重ねて地面に押し付ける。
どちらかと言えば土下座というより礼の方が正しかったがこれが私の精一杯の謝罪だった。
みんなの視線が私の背中に集中するのを感じた。
だがここで顔をあげれば泣いてしまいそうだった。

「お前っ……やっぱり潰そうとしてたんじゃないか!」
「やめろ霧野」
「だが神童……っ」
私はミスト君……霧野君に怒鳴られて胸倉を掴まれて上を向かされる。
見た目と行動のギャップに私は顔を歪める。
だが今顔を見なければならないのは霧野君ではない。神童君だ。

「ななし」

神童君は難しそうな顔をして私の方を見ていたが何か決心がついたのか瞳が真っ直ぐ、こちらへと向いた。
よし、「サッカーやめろ」でもなんでもこい、あっでもそれはちょっとヤダ。

「確かにお前は俺の足を潰そうとした、それは許すべきことじゃない」
「うん」
「だが俺はお前のサッカープレイは嫌いじゃない」


…………はい?



神童君、実はMなんじゃないだろうか。
ごほんっこれは言ってはいけないことですね。

「なんで?」
「負けたくないという気持ちがここに強く当たったんだ」
神童君は自分の胸元のシャツを握りしめた。
確かに私は実は負けず嫌いでサッカー馬鹿だ。それは認めよう。

「それにななしのサッカーはなんというか……サッカー好きじゃなかったらあんなにうまくならない」
神童君は剣城君の方を横目でちらっと見る。
確かに剣城君はサッカー大好きですごくうまい。


あぁ

この人馬鹿だ



「お前と一緒にサッカーがしたい」

神童君は私に向かって少し微笑んだ。
私は無意識に体が震えた。
それが恐怖なのか感動なのか焦りなのか怒りなのか笑いなのかは自分にもわからなかった。
白竜は私を見て目を見開いている。
私は素直じゃないから、素直な言葉が出てこない。

「神童君って馬鹿だったんだね」


その後、一年生たちが言葉のフォローをしてくれたことは言うまでもない。
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