雪村と

□ポジション
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「俺が10番だ」
「いいや俺だな」

目の前の光景に泣きたくなった。

早速胃が痛くなってきました吹雪先輩。
雪村とそろそろ離れたい。さっきあんな言葉を投げかけたが今すぐ返してほしい。
言葉のクーリングオフ制度ってないかな。あ、雪村がまず返さないか!!




革命選抜のメンバーが全員集合した所で月山国光の兵頭がキャプテンとして皆をまとめていた所から始まる。
あれ……確か南沢さん3年……まぁ1年がキャプテンしてる所もあるし大丈夫だよね。
「月山国光中2年、革命選抜チームのキャプテン兵頭司だ!!」
大きな声で自己紹介する兵頭。続いて私が紹介された。
私はいつものように粗相の無いように軽く挨拶する。
白恋中の女子のレベルが高すぎて忘れていたが一般的に見れば私もまぁまぁ見れるレベルだ。
白恋中怖い。見渡す限り女子が全員可愛い。
ひそひそと部員達が私の評価をしているのを聞くのはもう慣れた。
そんな時には雪村が一言。


「こいつに手ぇ出したら殺す」


全員がしんっとした。
いやいやいや、いきなりそんな発言誰でもビビるよ。
私も開いた口が塞がらない。混乱してつい雪村の頭を叩いてしまった。
機嫌を悪くした雪村は私の髪の毛を引っ張って右腕を掴むと私の背中に腕を捻りながら持って行き関節技をきめた。
いたっいたたたたたっ雪村、それ息出来なくなるし折れるから痛いっ!!!
氷里に助けを求める視線を送ると遠い目をしていた。氷里いぃぃぃっ!!!
それどころか氷里は私に更に追い打ちをかける。

「いつものことなんで話進めてください」
「氷里ぃぃぃっ」
「うるせぇ黙れ」

雪村は私の背中を足蹴にするとすたすたと元の場所へ戻って行った。
若干他校に引かれているのは気のせいか…!!
涙が出そうになりながら残っている痛みに耐えてると誰かが近くに居る感覚がしたので見上げるとツリ目の男の子と太い眉の男の子が立っていた。
確か、木戸川清修の滝と貴志部だっけ?去年テレビで見た。一体何の用だろう。
笑いに来ただけだったら性格悪い。

「大丈夫?」
「え、あ、うん」
「おい雪村お前いつもこんなことしてるのかよ」


木戸川に転校したい…っ!!!

貴志部は私に手を差しのべながら笑顔を向けてくれた。ぎゃあああっ王子様オーラが!!その笑顔で女子を何人殺してきた!!
滝も雪村に食ってかかってくれる。いや、それは火に油を注ぐようなものだよ!!やめたげて!!
案の定物凄く不機嫌そうな顔で雪村は「あぁ?」と凄んで睨んだ。
滝もその態度に腹が立ったのかつり目を更にキツくさせて雪村を睨んだ。

兵頭さんは内心戸惑っているだろうがキャプテンの役目はきちんと果たさないといけないと感じたのかポジション決めに入った。
最初にGKを決め、次にFWを決めていこうとしたので貴志部にお礼を言って滝と雪村を列に戻す。
お前らのことなんだからきちんと聞けよ。
私が背中を押しても二人で睨みあっていてなかなか動こうとしない。白恋と木戸川のメンバーがしぶしぶと二人を戻してくれた。
木戸川の人も苦労してるんだね……。貴志部に謝ると困ったように眉を下げて笑われた。
そしてこの一瞬でライバルと化した滝と雪村は10番争いに至ったわけです。



「はぁ?女の扱いも出来ない奴が黙ってろよ」
「何だよお前さっきから突っ掛かってきて!!」
「ななし可哀想」
「なっ……!!」
滝と言い合いしていたらどうやら私の話になったらしい。
うん、非難するには格好の餌だよね!私もそう思うよ!
雪村には悪いけどこれで雪村が少し大人しくなってくれるなら滝応援する!!
南沢さんに「あいつら大丈夫かよ」と耳打ちされて「いつものことなんで」と悟った笑顔で返す。
すると他校の方々に憐れんだ視線を送られる。白恋苦労してますよ!!真狩なんか無言でいつも頑張ってるもんね。

「この二人は置いといて他のポジション決めましょうか」
「おぉ…お前慣れてんな」
「いつものことですから!」
「笑顔で言うな笑顔で」
「ななしさん今度奢るよ何が良い?」
「おい先にポジション決めようぜ、それでいいか兵頭」
「うむ、問題無い」
南沢さんと貴志部にフォローされて他のポジション決めに移る。10番と11番以外はあっさり決まった。
南沢さんはFWにも関わらず「俺MFでいいわ」とあっさり。うちの雪村にもそれ位の臨機応変が欲しい。
決まった所で世間話に入る。最初に質問してきたのは貴志部だった。

「ななしさん雪村とはいつもあんな感じ?」
「ん?」
「あれ暴力じゃねぇの」
「やっぱそう思います?」
「思う思う、いじめられてるのか?」
「えぇ!!それは助けないと…」

いじめ、と聞いた貴志部は真っ青な顔をしてわたわた慌て始めた。真面目だなぁ。何だか新鮮だ。
ほわほわと和んでいると木戸川清修の清水が「あ」と声を上げた。
視線は私の背後だ。清水の視線を辿り後ろを振り向こうとしたら強い力で頭を鷲掴みにされる。

あいぁたたたたたっ!!潰れる、潰れます!!
こんなことするなんて一人しかいない!!


「逃がさない、って言ったよな?」
「ぎゃぁぁぁ雪村痛いっ自分の力知ってる!?」
「他の男と喋ってるお前が悪い!!」
「理不尽!!」


雪村だ。雪村が私の頭を鷲掴みにしている。
しかも理由が理不尽以外何物でもない。
どうやら決着がついたらしい。
10分間の口喧嘩の死闘の末、勝ったのは雪村。さすが、成績優秀で口達者なだけある。
滝が後ろで息を切らし、雪村に信じられないものを見るような視線を送る。
そりゃそうだろうな!!私も何でこいつが此処に存在出来てるのか不思議だよ!!
サッカーの力って凄いな!!

「おい兵頭決まったぞ」
「う、うむ……」
「……何だよお前ら」
「いや、別に」
「何もっ」

雪村の手は緩んだものまだ私の頭を掴んでいる。
周りの視線に気づいたのか雪村は今度は周りを睨む。
皆、特に一年生は全力で目を逸らす。怖いもんね!!大丈夫、そんな謝るような視線を私に向けなくてもいいよ!!
雪村はその視線にも勘よく気付き、負のオーラを更に出す。

「これだから嫌だったんだ……」

ぼそっと雪村が呟いた言葉を私の耳は逃さなかった。
雪村は私がとられるが嫌だと言っていたが、そりゃ


「雪村はななしさんに暴力振るの禁止!!」



こうなるだろうな。
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