雪村と

□革命
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「……」
「……」


早速廊下で鉢合わせてしまった。
どうしよう。
雪村凄い睨んでるよ。横に居る吹雪先輩は気まずそうに乾いた笑顔を浮かべる。

もういい加減にしてくれないだろうか。

自然に溜め息が出てきたが、まずいと思ってすぐ手を口元に持っていったが時すでに遅し、
雪村が唇を噛みながら今にも殴りかかりそうな勢いでこちらを見ていた。
あーあやってしまった。
このままだと雪村がかわいそうなので私は速攻で逃げることを決め、走る。

吹雪先輩の「名無しちゃん!!」と呼び止める声も聞こえなかったことにしよう。





「君って馬鹿だよね」
「氷里死ね」
「お前が死ね」
暴言を交互に吐き続けた後、デザートの苺をとられた辺りで、氷里が一体どうしたのか事情を根掘り葉掘り聞き始めた。
何この子雪村並の暴君。
だが今まで氷里はよく分からない人物だと思っていたけどちゃんと向き合ってみると意外と優しい。
笑顔で辛辣なこと言い出したり厳しいこと頼まれるけどちゃんとアメはくれると思う。
雪村はムチしかなかったのでむしろアメをくれるなんて一瞬戸惑ってしまう。

「雪村がわかんない」
「それは僕もだよ何年一緒に居るの?」
「話し始めたのは小学校の二年か三年」

ふーんと自分で聞いたくせに氷里はさほど興味なさそうに相槌を打つ。
あ、何か泣きそう。こいつ酷い。
けれども雪村だと此処で更に「お前っておもしろくねぇよな」という謎の暴言を吐いてくるのでまだマシと言える。

残りの苺を食べようと俯き加減になった時、氷里がワンテンポ遅れて声を掛けてきたので不思議に思い顔を上げてぎょっとした。

氷里が真っ青な顔をしていた。え、何、どうしたの氷里。
外に熊でもいた?吹雪先輩呼んでこようか?え?

「凄く……睨まれてるんだけど……」
「気にしないで」

雪村は私を睨んでいるのか氷里を睨んでいるのか知らないがこちらをじっと見つめていた。
もう何なんだこの子。傍に居てもいなくてもどっちにしろ面倒くさい。



食べ終わった後今日は特別な用事があるらしく帝国学園という学校に向かうと吹雪先輩が私達を見渡しながら言う。
私は初耳だったが選手達は前々から知っていたようで「やっとか」と呟く声が聞こえる。
え、嘘だろ。どういうこと。

「それと、」

吹雪先輩は言いにくそうに顔を顰め、俯き加減になる。
一体どんな重い内容が発せられるかと若干選手達は身構える。
どうやらこの内容は選手達も聞かされていないらしい。

「僕は僕で動かなきゃいけないから君達を木戸川のアフロディ君に任せるよ」


……


はい?




「はい吹雪先輩!!」
「はい名無しちゃん!!」
頭がパニックになって思わず小学生のように大きな声で挙手してしまった。
選手達の視線が私に集まる。うわぁ何これ恥ずかしい。

「私に分かるように説明してください!!」


必死の心の叫びだった。









場所変わって帝国学園。
初めて来たが此処はあれですか、要塞ですか。
一体何の軍施設?全体的に照明暗いし、女の子居ないし。
コツコツと足音がなるのも不気味で仕方ない。
でもどっちかというと私の隣を無言で歩く雪村の方が怖い。
何この子、話しかけるなと言ったのは自分なのに今は必死に私に誰も近づけようとしない。
雪村を怪訝そうに見つめると無言で勢いよく叩かれた。


吹雪先輩の話をまとめると、「革命選抜チーム」なるものに私達は加わるようだ。
雷門と戦った月山国光、白恋、木戸川の連合チームで雪村や氷里達はそのメンバーに選ばれたらしい。
雷門が革命の風を起こしたことでフィフスセクターもより強力な選手を出してくる。
それに立ち向かう雷門を見守り、共にレベルを上げることが目的なんだそうだ。
白恋以外の二校にマネージャーはいないらしく私が1人でマネージャー業を受け持つことになった。
出来るだろうか、と少し不安になるが白恋の皆が手伝ってくれるそうなので心強い。

「ななし何ぼーっとしてるの置いてくよ」
「あ、ごめん」
「氷里、先行っといてくれ」


背後から雪村の声が聞こえたと思ったら首元に腕を回されて身動きが取れなくなった。
雪村っ本当息出来なくなる!!何ていう暴力!!そろそろ本気で殺される気がする。

氷里は私の様子を面白そうに眺め「わかった」と一言笑顔で扉の向こうに行ってしまった。
氷里ぃぃぃっ!!数日間の友情は何処に行ったの!!所詮私達はその程度なの!?

扉の方に手を伸ばすがその腕を掴まれ雪村の方に引っ張られたのかと思ったら私の身体は堅い壁に叩きつけられた。
雪村は手加減してないらしく肺の辺りに訳のわからない浮遊感を感じ、息が一瞬出来なくなる。
後から滲み出てくる吐き気が拭えなくて涙目になりながら口元を手で覆うと雪村が私の顔のすぐ横の壁を音を立てて殴った。
恐る恐る音の方に目を向けると雪村の拳の皮膚は赤くなっており痛々しい。

私は更に訳がわからなくなって雪村に抵抗しようとしたが両腕を掴まれて身動きが取れない。
視線で訴えようとすれば雪村の獲物を狩るようなギラギラした目に完全に圧倒されてしまった。




「そんなに氷里が大事かよ」

「……え」
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