雪村と

□白咲
2ページ/2ページ


そうだ、白咲に言いたいことがあったんだっけ。

あぁ、でも白咲をまた傷つけてしまうかもしれない。
今度は泣いちゃうかもしれない。

やだなぁ。


「ねぇ白咲」
「……何だ」
「サッカー好きなんだね」
「……」
「本当はサッカー好きなんでしょ」
「そんなことはっ」

白咲は苦虫を噛み潰したような顔をして反論する。
だが次の言葉は出てこない。
当たり前だ、結局私の言うことが事実なのだから。

きっと、白恋の皆も白咲がサッカー好きなのは知っている。

現に氷里や真狩達はじっとこちらの様子を窺いながら軽く頷いたりしている。


今まで接してきたら誰だってわかるだろう、白咲は優しい。
石だってあのキレやすい性格がなけりゃ仲間として心強いことは知ってる。
そもそもサッカーへの感じ方なんて人それぞれだ。
私はフィフスセクターを完全に悪と見なすのは浅はかな考え方だと思う。

そう呟くと白咲は目を見開いて震えた声で否定しようとする。

あぁどうしよう、私じゃ白咲は納得しないかも。
どうしよう。

そんな時だった。


「一緒のフィールドに居ればわかる」
「雪村っ」
「どんだけ練習してきたか」
「……」

雪村が仏頂面だが確かに芯の通った口調で白咲に語りかける。
不器用だが雪村の言葉は何処か説得力があった。
凄いな、と私は感心せざるを得なかった。

白咲は緊張の糸が解けたように蹲ってしまった。

白咲身長高いんだから大の大人が泣いてるみたいだよ。とそっと肩に手を置くと払いのけられた上に叩かれた。

どういうことなの。










一件落着した帰り道、チームメイトを置いて先に行ってしまった雪村を私は必死に追いかける。
こんにゃろう足速いな!!
雪村は早足で道を歩く。私は走ってそれを追いかける。
これが選手とマネージャーの違いだろうか。
男の子はやっぱりずるいと思う。

「雪村っ」
「……」

やっとのことで追いついたのに雪村は一向に無視だ。
ちょっ、何これ泣きそう。
やはり先程のボールを暴力に使ったのがいけなかったのだろうか。
それについては謝るから何か喋ってくださいお願いします。


……あ、


もしかして



「好きな子が出来た……」
「はぁ?」
「……ごめん、私そんなことも知らずに無神経に話しかけて」
「違っ」
「お幸せに!!」
「ちょっ待てっ」

再び走ろうとしたところで雪村に腕を掴まれる。

雪村に好きな子が出来たなら納得出来る。
勘違いされたくないよね、そうだよね。
ベタな展開だけどそれは日常のすぐ横にあったんだ!!
うん、気にしないで雪村。雪村カッコいいから告白したら大丈夫だよ!!


「名無しは東京に残るのか?」
「……えっ」

あれ?違う?
あぁそう、ならいいんだけど……
残念そうな顔をすると雪村に頬を抓られた。
が久々のせいかもあって何だか痛く感じた。

「答えろよ」
「あっうん残るつもりだけど」
「そうか……」

そう言ったきり雪村はまた黙ってしまった。
何が言いたかったのだろう。
白恋が東京に残ってるのは何か理由があるの?

「雪村それってどういう意味」
「お前には関係ない」
「何でっ」
「とにかく」
「……」
「しばらく俺に話しかけるな」
「なっ」


何それっ……!
私は雪村の発した言葉に憤りを感じずには居られなかった。
あんだけ毎日一緒だったのに無視した挙句話しかけるな?
意味が分からない。
何だか雪村に踊らさせる気分がして不快に感じた。
胃辺りがむかむかと動いているのが分かる。

此処で怒っても何もならないのは分かってる。
分かってるんだが生憎口は止まってくれないらしい。

「わかった」
「……っ」

そう言葉発した私の表情は酷く冷たかったのだろう。自分でも不穏なオーラが流れてるのがよくわかる。
雪村は一瞬だが、絶望したような顔をした。


私はそんな雪村の顔を直視出来なくて皆と歩いてきた氷里にタックルした。
氷里は少し驚いたような顔をしたがすぐに状況を把握してされるがままになった。

さすが氷里、空気読める奴は違う。

吹雪先輩はオロオロして「どうしたの?」と私と雪村双方に聞いたが私達は何も答えなかった。
答えることができなかった、と言った方が正しいのか。




今回は雪村が理由を言うまで仲直りしてやるもんか!!








(名無しの馬鹿)
(雪村の馬鹿)
(俺はお前を他の奴にとられたくないだけなのに)
(仲良くしたいだけなのに)
(何で分からないんだよ)
(意味わかんない……っ!!)





NEXT
革命選抜に向けて動き出す白恋。何だか最近いざこざが多い二人。早くいちゃらぶさせたい。
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ