雪村と

□白咲
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どうしてこうなった。


「ななし」
「雪村」
「吹雪先輩」

「答えてあげて!!お願いだからやめたげて!!」


私は白咲を無視し、雪村は何故か私を無視する。
どうした雪村、反抗期か。
吹雪先輩は相変わらず私を猫かわいがりしてるし。
というか白咲、謝罪も無しにまた仲良くなれると思うな。

「名無しちゃん何したの」
「知りません」
「…僕二人の仲良い姿撮りたいのにな」
「カメラ貸せ」

本当にこの人は油断も隙もありゃしない。
私の隙あらばカメラを構えるような人だ。誰だこの人コーチにした人。


ホーリーロードも雷門に負け、てっきりすぐ北海道に帰るものだと思っていたがいまだに私達は東京に居る。
どういうこっちゃ。親も不審に思ったらしくよくメールが届く。


「何でこんなとこでサッカーしてるの」
「あぁそれはね」
「吹雪先輩!!」

雪村が珍しく大声を出して吹雪先輩を睨む。
え、どうしたの雪村。本当に反抗期?
まぁ私から離れて一人立ちするなら無理には止めないけど。

取りあえず私の疑問に答えてほしい。
今いる場所は雷門がよく使っている河川敷のサッカーグランド。
学校も行かずに何してるのこの人達。
中には受験生も混じってるだろうに。早く学校に帰ればいいものを。

熊崎と石は居なくなったが何故か白咲だけ残ってる。
お前も早くフィフスセクターに帰れよ。
白咲の帰る場所は白恋じゃなくてフィフスセクターでしょ。

「……ななし」
「……」
「怒ってるだろ」
「……」

無視無視、このまま白咲と話したんじゃ私のこの怒りを何処にぶつければいいんだ。
あぁもう!!話しかけんな!どっか行け!!

そんな願いも虚しく白咲はずっと私に話しかけてくる。
元々仲が良かったせいもあって私はうっかり答えてしまいそうだ。
このまま1人で耐えれるはずがないので雪村に話しかける。

「雪村」
「……」


が、無視される。


無視されるってこんな心境なんだな。


ごめん白咲。結構酷いことしてるね。



白咲は私に無視され、私は雪村に無視される。こんな状況が先程から続いている。
吹雪先輩は困ったように私達を見ている。
これは誰かが折れないと解決しないような気がする。
雪村は原因が解決しない限り不可能だろう。

ここは私が折れないといけないの。

男の子って面倒くさい。


何だか自然と溜め息が出た。



「白咲」
「っななし」
「歯食いしばってね」
「えっ」

目の前にあったボールを白咲の腹部目指して蹴り込む。
うん。特訓してただけあって綺麗に食い込んだ。
白咲は何が起こったのか理解出来てないらしくうずくまってむせていた。
うわぁ私ってば外道。サッカー大好きな子達の前でボールを凶器にしてしまった。
雪村は驚いたような憤ったような顔で私を見つめている。
本当は必殺技ぶち込みたい位だったんだからそんな顔はやめてください。


「キーパーでしょ?この程度のボール止められなくてどうするの」
「……ななしっ」

あぁもう、

だから私が悪者になるからそんな目やめて皆。
雪村も私を睨んでいる。
何なの、ほんと。


私は泣きそうになったが大きく息を吸うことで気を紛らわした。
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