雪村と

□依存
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「ゆ……」

まずい。雪村だ。
予想通り理解できないと言いたそうな目で私を見ている。
まだ残ってたんだ。やだ。雪村と今話したくない。
こんなボロボロの私、雪村は見たことないから驚くだろう。拒絶されたらどうしよう。

「おい」
「……今話しかけ」
「何で泣いてる?」

こいつ私の意見無視しやがった。
えぇはいそうですね。雪村はそんな子ですよね。
ちょっとでも期待した私が馬鹿だったよ。

「何で泣いてるんだ」
「雪村には関係ない」
「…………あいつか」
「え」
「あいつが居なくなかったからか」

あいつはきっと吹雪先輩のことだ。え、どうしたの雪村。
吹雪先輩のことをあいつだなんて。失礼じゃないの。
どうなの。雪村。私ここ一週間何も話してないから知らないよ。

「あいつって」
「あいつは!」
「……」
「あいつは、俺を裏切ったんだ……っ!!」

雪村が言い聞かせるように私の両肩に手を置き揺さ振る。やめて。気持ち悪い。
力を込めすぎたのか爪が肉に食い込んでいる。

え、どういうことなの、雪村は吹雪先輩が自分を裏切ったと思ってる?
もしかして、約束破ったから?

私は考える。落ち着いて考えろ自分。
これは雪村の吹雪先輩への執着から来るものだ。
きっと寂しすぎて嫌いだったと書き換えたんだ。先程の私がなりかけたように。
でもどうして。どうしてそんな目で私を見るの。

「雪むっ」
「お前も裏切るんだろ」
「え」
「お前も俺を裏切るんだろ!!」
「雪村痛いっ」

どうしてこうなった。
雪村は私までもが裏切ると思っているらしい。
周りの慕っていた人が、全員自分の傍からいなくなるように。
というか裏切るって何。どうやったら裏切る形になるの。
てか肩あいたたたたっば、爆発する!力強い。

「痛いって」
「うるさい!!」


がしゃんっ

また先程と同じような音がした。



え、


嘘でしょ。


「…………え」
「!!」

爆発したのは肩じゃなかった。
ヤカンだ。

雪村が勢い余って私を突き飛ばした弾みにヤカンが上に乗っているストーブに当たってひっくり返してしまったのだ。
対応出来なかった私は自然と100度程の熱湯を浴びる結果となった。
おまけにストーブに気付かずに床だと思って手をついた場所はストーブの鉄の部分だったのだ。
そりゃ熱いはな。

どうしよう。
スカートを捲ると太ももは真っ赤になっていた。
赤い斑点が放射状に広がっていてこれは何だろうと考えるが理系じゃない私はわかりようがない。
わっピリピリするというかなんか、痛い。
いや、痛くない。よくわかんなくなってきた。

ともかくこれはかなり危険だ。早く冷やさないと大変なことになるな。
もう一度雪の上で倒れてこよう。


雪村は相変わらず無言で立ち尽くしている。
大丈夫雪村。これは事故。
傷残ったら責任は取ってもらうけど。なんて冗談は今の雪村には通用しないだろう。
というか私も言いたくない。
代わりに雪村を安心される言葉をあげたい。

「大丈夫雪村」
「あ……俺っ」
「大丈夫だから」

ただ大丈夫としか言えなかった。
それと一緒に私は雪村の頭を優しく撫でた。
雪村の瞳からぼろぼろと大粒の涙が出てくる。
それはただ単に私に怪我をさせてしまった罪悪感からでなく、今まで積み重ねた涙だろう。
雪村は私以上に苦しんでいたんだ。
誰かに当たるしかなくて。その矛先がきっと、吹雪先輩だったのだろう。
雪村は嗚咽を漏らしながら私に「ごめんな」と仕切りに叫んだ。
大丈夫だから。大丈夫だから。
だが身体は言うことを聞いてくれない。
あぁ、やっぱ大丈夫じゃないかな。
でも雪村が輝いてくれるなら。喜んでくれるなら。

私はいくらだって嘘をつける気がした。




自然と雪村と手を繋いで外に出ていた。
雪村はまだ泣いていた。
私も涙目だった。


「雪村」

これから二人で白い世界に行こうよ。



相手に依存したのは雪村じゃなくて私だった。







(ねぇ雪村)
(……)
(また二人でサッカーしようね)
(……あぁ)
(それまでの辛抱だから)








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重い。・ω・。重い。vs雷門を過ぎれば一気に明るくなる…はず!
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