雪村と

□計画
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「あれ?」

放課後、かなり雪が強かったので弱まるまでコンビニで待つついでに飴を探した。
やっぱ今日の飴ないなぁ。
あ、でも新発売がある。これで雪村も機嫌が直るだろう。
鼻歌を歌いながらレジで精算を済ませ、暇つぶしに雑誌を見ようとした時だった。

「……吹雪先輩?」

外を見ると吹雪先輩がいた。
雪が強いというのに傘も差さずに突っ立っていた。
うわぁぁあれ絶対風邪ひく。
いくら雪原のプリンスでもやっていいことといけないことの判断はしなくちゃ。大人なんだから。

「……じゃなくて」

まじまじと吹雪先輩を見るとどうやら心此処に在らずといった様子だった。
何かあったのだろう。何だかんだで色々抱えている人だから。

吹雪先輩のもとへ行こうかどうか少し考える。
所詮大人のことだ、何かあっても「君には関係ないことだから」で言いくるめられるだろう。

だがもし吹雪先輩が誰かの助けを必要としていたら?

「……吹雪先輩」

先程買った袋から飴を一つ取り出し、強く握りしめ私は吹雪先輩の方へと走った。



「吹雪先輩」
「……あ……名無し、ちゃん」

いつものタックルはこなかった。疑いが確信へと変わっていく。
無理に笑顔を作ろうとして吹雪先輩の顔は嘘の笑顔で覆われた。大人って本当にこういうところやだな。
私は悟りながら無言で吹雪先輩に飴を差しだす。

「何かあったんですか」
「…………」

いつも雪村にやるのと同じように肩や髪についている雪を軽く払ってやる。
この二人はどうしてこう似ているんだろう。

心が一瞬だけ暖かくなったが吹雪先輩の違和感ですぐにどす黒いものに覆われた。
何だ、この違和感は。何か失ってはいけないものを失った違和感だ。

「ねぇ名無しちゃん」
「はい」
「君は雪村のことが好き?」

普段なら笑って否定するが今吹雪先輩の口から出された言葉はあまりにも重いものだった。
吹雪先輩は私の言葉を待っているのだ。
そう考えると冗談を言うわけにはいかなかった。

「はい好きです」
「……うん」
「………あの」
「今のサッカーどう思う?」
「どうって…っ」
「楽しい?」
「……」

これはあれか。
ついにフィフスセクターが白恋に何かしらの方法で介入してきたんだ。
吹雪先輩は今、そのことで悩んでいる。

「楽しくないですけど…」
「けど?」
「雪村が」

私は一つ一つ大切にしながら言葉を発する。
今発した言葉が、今後の未来を決めるのだ。

「雪村が、楽しくサッカーが出来るならそれでいい、です……」

吹雪先輩は少し驚いたように目を見開いたが優しそうに笑って私の頭を撫でた。

「その言葉だけで十分だよ」
「吹雪先輩っ」
「名無しちゃん」

その時の吹雪先輩はまるで消えてしまうような優しい笑顔で、


「雪村をよろしくね」


次の日、

吹雪先輩は、




(え……嘘…)
(そういうことだななし)
(なんの冗談……)








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何これ怖い。ここからずっとシリアスモード。この時雪村は吹雪先輩を待ってます。
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