雪村と

□計画
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「何処行こっか」
「寒いから暖かいところ」
「何処行く気なの」

現在お昼休み。
雪村と私は東京観光の計画を立てている。

一か月もするとマネージャーの仕事も段々慣れてきて浮かれている自分がいる。
白恋中サッカー部も地区大会突破し、全国大会のため東京に行けることになった。

雪村に「サッカーを捨てた」と言われて悔しくなり再びサッカーを始めたことは内緒にしておく。
最近ボールさばきも様になってきてちょっと嬉しい今日この頃。

東京行きたいところいっぱいあるんだよなぁ……。
あ、夢の国は確か千葉なんだよな。…雪村が夢の国専用のカチューシャとかつけたらかわいいんだろうな…。
いきたいな。一緒に某ネズミキャラクターと雪村と私で写真撮りたい。

……物凄くかわいい

どうしよう


「何考えてんだよ」
「別に」
「顔緩みすぎ」

雪村はぶすぶすと鈍い音をたてて私の頬をつつく。痛い、爪切れよ。
私の背後で氷里が「うわぁリア充爆発しろ」とか真顔なのが怖い。
雪村よりこっちの方が怖いんじゃないかと最近本気で思う。
何だか怒らすと怖いのでポーチにたまたま入ってた飴を投げておく。
エサか、と謎のツッコミを頂いたが私は何も聞いていない。

「俺も欲しい」
「あ、ごめんあれが最後」
「……氷里」
「食べちゃった」

ずぉっと雪村を取り巻いているオーラがどす黒いものになった。
あーあ機嫌悪くなった。
雪村は飴が入っていたポーチに描かれているキャラクターを睨んでいる。
睨んでも出ないものは出ない。
しょうがない。

「放課後また買っとくから」
「あれ期間限定だろ」
「え」

やっぱり気付かれていた。
甘いものに目がない雪村は必ずコンビニで新発売のお菓子を確認している。
あーくそ、確認済みか。やばいな。
雪村の機嫌はどんどん悪い方へと向いていく。
弁当密集地で一緒に置かれていた私の筆箱から何を思ったのかシャーペンを出してペン回しを始めた。
だが、視線は決してそちらに向くことはなく私をじっと見つめたままだ。

「ななし対戦表発表されたからコピーしてき……」

白咲がこの状況を見て固まった。
もごもごと飴を頬張る氷里と雪村に睨まれている私と機嫌の悪い雪村。
何回か唸ってからドアを閉めようとするので私が足を挟んで用事を聞きだすことになった。
何でこんなヤのつく人の真似をしなければならないのだろう。

要件を聞くとどうやら全国大会の対戦表が発表されたらしい。
それをサッカー部員人数分コピーしてきて欲しいとの要望だった。
うわ、木戸川やっぱ上がってきたか。雷門もう常連だね。
そういえば雷門は革命っていうやつ起こしてるんだっけ。フィフスセクターに逆らってるんだよね。
円堂さんに一度会ってみたなぁ。
そういえばうちはどっちの勢力になるんだろう。

…………雪村が楽しそうだったらどっちでもいいや。あ、そういえば雪村。

うちの我儘王子は完全に対戦表に興味が向いてしまったようで私に体重をかけながら後ろから覗いている。
お、重いよ重い雪村君。

「……何だそれは」
「えっどれ?」
「それだ」

白咲が急に顔を顰めるので不思議に思って指を差す方向を見ると散乱している雑誌たちだった。
思わず私も顔を顰める。
なんだかんだいって白咲は真面目だ。試合と一緒に観光をしたいと言ったらねちねち言われるだろう。
雪村もそれは分かっているようで我関せずと対戦表をまじまじと見つめいる。
いや、お前絶対全部見終わったろ。

「えーっと……」
「東京観光か」
「いや、そのっ」
「試合に行くんだぞ」
「わかってる、けど」
「わかってないな」
「……白咲の馬鹿」
「誰が馬鹿だ」

結構強く頭を叩かれた。こいつも私に容赦ねぇな。だが正論なので返す言葉が何もない。
雪村も流れに任せてチョップをかましてきたのでとりあえずデコピンを食らわしたら髪をぐちゃぐちゃにされた。

「雪村っ」
「ここ」
「え」
「ここ行きたい」

白咲に雑誌を奪い取った雪村が指差したところは東京で有名なスイーツ店だ。
私が付箋をしているのに気付いたのだろう。私も行きたいので黙って頷くしかなかった。
雪村はイケメンにもふっと軽く笑って「決まりな」と私の頭を軽く叩いた。

え、何このイケメン。


その後のことは二人で白咲に拳骨を食らったのでよく覚えていない。
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