雪村と

□公園
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名無しがおかしい。
いつものように蹴ってみたり叩いてみたり殴ってみたりしたが特にツッコむ様子もなく淡々と仕事をしている。
なんだつまんねぇ。



……とか思ってるんだろうな。
残念だったな。疲れてるんだよ。



雪村と私は小学校が一緒だったので当然の如く帰る方向が一緒だ。
必然的に時間が同じになれば一緒に帰るしかない。
面倒くさい。とか言ったら雪村に殴られそうだ。
雪村はあまりべらべらしゃべるわけでもなく、話しかけても一言二言しか返ってこないので話題が広がらない。
うーん。女子だともう少し気を使ってくれるのにな。
というか女子じゃなくても白咲とかだと話術あるから楽しいんだけどな。
かと言って雪村と帰るのが嫌なわけでもないし。
こいつ口悪いしすぐ手出るけどあくまでイケメンだからね。

「おい」
「ん?」
「公園着いたぞ」
「はいはい」

雪村とは公園を軸に家がお向かいさんと言っていいほど近い。集団登校でも班が一緒だった。
だから自然と公園で別れることになる。
まぁ公園といっても本当に小さな公園で滑り台とブランコと砂場とシーソーが身を寄せ合っている程度だが。

「さすがにこの寒さじゃ誰もいないね」
「あぁ」

雪村はそっけなく返事する。
うわぁおもしろくない。どうしよう。沈黙が嫌過ぎてどきどきしてきた。

昔はこんなんじゃなかったんだけどな。
雪村ももっとかわい……くなかった。
いつも通りガキ大将だった。
そういえばよくこの公園で暴れてたっけ。

ふと、シーソーに目がいった。
これ乗ると冷たいのかな。でもタイツだし大丈夫か。

そっと乗るとぎしっと軋む音がした。
うぉぉぉ金属製超冷たい。あとで絶対タイツ鉄くさくなる。

「何してんだよ」
「昔の雪村のこと考えてる」
「はぁ?」

なんだよそれとポケットに手を突っ込みながらマフラーに顔をうずめている。眉間には皺が寄っていた。この子ぐれてる。

「昔は私の方が身長高かったのに」
「今は俺の方が高いな」
「たった3cmでしょ」

小さい頃の雪村はそれはまぁ身長が低くて、そのくせに態度だけはでかかった。
そのせいで上級生によくいじめられていたけど。
私は馬鹿だなぁと思いながら眺めていたのを覚えている。

「よくこの公園でもいじめられてたっけ」
「なっ昔の話だろ!」
「痛い雪村」

雪村は顔が赤らめてそれを隠すためかシーソーの反対側を思い切り踏んだ。
おかげで私は股関節に急激な痛みが走る。
うわぁあぁっ何これ超痛い。お前大事なところに何するの。

「お前が余計なこと言うからだ」
「雪村本当に嫌い」
「…………」

雪村は傷ついたように顔をしかめシーソーの反対側にゆっくりと腰かける。
私が恐る恐るシーソーに体重をかけると雪村がゆっくり上がって行った。
おぉこれは楽しい。
雪村も少し感動したのか目を輝かせながらシーソーに体重をかける。
私はシーソーに持ち上げられる。

「楽しい」
「昔やってたろ」
「あー」

そういえば昔一度雪村シーソーで遊んだ記憶がある。
あの時の雪村があまりにもかわいそうで見てられなかったからな。




……よし雪村が乗ってる内は昔のことを思い出しても大丈夫だろう。
理由を聞かれたら今日のサッカーで思いだしたとでも言えばいい。
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