雪村と

□お弁当
2ページ/2ページ


枝毛を切られてから1分が経った。
その間に私は雪村をボコろうと思ったが失敗し、逆にボコられるという何とも不思議な出来事が起こった。
雪村が不機嫌そうに腕を組みながら私と向き合う。
もういい加減にしてくれないかなこの子。

「……」
「何だよ」

話をちゃんと戻そう。
長年の経験から言うと、雪村がただ部員達にサッカー教えてほしいからと私を部活に入れる訳がない。
小学生の時も「格好悪い姿見せるからやだ!」と頑なに同じサッカーチームに入ることを断られた。
ましてや中学生で最も失敗や恥ずかしいことが露わになる時は部活だ。
それは雪村も重々理解しているはず。
なのに何故だ。

私は次々と疑問が湧き出てきて頭がごちゃごちゃになっていく。
あーもうわかんない。雪村豹牙という男がわかんない。

「雪村」
「……」

何故か目を逸らされた。その顔は至極冷たかった。
ただ単に拗ねただけなのだろうか。それとも悟られたくないからだろうか。

「何で私を入部させたの?」
「それは……っ」

「名無し隣のクラスの子が呼んでる」

突然、クラスメイトに私が呼ばれる。
クラスメイトが指差す方に視線を向けて見れば知らない男子がドアに寄りかかって待っていた。
……何だろう

「雪村ちょっとごめん」
「やだ」
「ごめん」
「やだ」
「ご め ん」
「や だ」

立ちあがって行こうとすると雪村は私の制服の袖を掴んで離そうとしない。
腹が立ったので雪村に面と向かって「離せ」と言ってやろうと思って後ろを振り向いた瞬間

般若がいた

雪村がうっすらと笑みを浮かべていたのだ。
だが目は全然笑っていない。

おぉっとこれは厄介だ。

「雪っ」
「俺ちょっと行ってくる」

笑顔を顔に貼り付けたまま雪村は教室の向かって入り口に歩を進める。
誰だか知らないけどご愁傷様です。

案の定雪村は超笑顔で男子生徒に近寄っていく。
男子生徒は最初こそは不安な顔をしていたが段々と身の危険を感じたようで逃げるように去って行った。

雪村恐るべし。

そして不機嫌な顔で雪村は私の方に帰ってきた。

「何の用事だったのあの人」
「知らね」
「……そ」
「ん」

後で友達に聞いておこう。誰か知っているだろう。

「あ、そう」

「だ」と言い終わる前に雪村が抱きついてきた。
しかし甘い雰囲気は一切なく、私にとってはむしろ地獄だ。

「雪村ぁぁっちょっ苦しっ」
「大丈夫だ問題ない」
「あるよ!!!」

機嫌が悪い時に抱きつかれると加減を知らない雪村は最悪だ。
骨が軋む音がするぐらい強い力で抱きしめられる。

雪村が私を抱きしめながら意地悪そうな顔で舌を出していたのに私は気付かなかった。
あとで氷里が教えてくれるまでは。

本当になんなのこの子。




放課後来ないで、と思った昼下がり。






(あいつが名無しに気があったなんて誰がいうか)
(だから脅してやった)
(名無しに近づいたら殺す)













NEXT
デレてる雪村の回。次回は吹雪先輩を絡ませたい。
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ