雪村と

□お弁当
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突然だが、うちの雪村が超絶にかわいい。

「それくれ」
「はいよ」

雪村が席から身を乗り出して金魚のように口を開けて待っている。
かわいいなぁどうしようキュン死にしそう。
私は自分の箸で卵焼きを掴み、雪村の口に持っていく。

「リア充爆発しなよ」
「なんのこと氷里」

近くにいた氷里は少し引いているようで一線を勝手に引かれたが気にしないでおこう。

うちの狂犬はご飯の時だけはおとなしい。
礼儀正しいというか食い意地張っているというか……。
とにかくかわいい。そしてかっこいい。
私の幼馴染がこんなにかわいいわけがない。
あ、どうしようテンションおかしくなってきた。


……じゃなくて



「雪村ちょっと話を聞いて」
「何だよ」

食べ終わる頃を見計らって雪村の口にチョコを放り込む。
これで午後の授業も頑張ってくれるだろう。
案の定雪村は機嫌良さそうにもきゅもきゅと口を動かす。
じっとこちらを見ているのでまだ大丈夫だ。
多分チョコが溶けた瞬間雪村に殴られるだろう。
それまでに聞きたいことが山程あった。

「何で私をマネージャーにしたの」
「……」

雪村は唸りながら首を捻り、窓の外の雪を見つめる。
口が名残惜しそうに動いていた。

「お前サッカー好きだしマネジ必要だったから」
「それだけ?」
「吹雪先輩好きだろ」

まぁ雪村の言う通りだ。吹雪先輩とは今や狩る者と狩られる者状態になってしまっているがイナズマジャパン時代は私の憧れだった。
ウルフレジェント大好きだったなぁ……。

ぼーっとしていると雪村がポケットからポッキーを取り出して私の頬をつつく。
口を小さく開けばポッキーを突っ込まれた。
あ、うま。

「お前アイスグランド出来ただろ」
「それに一体なんの意味が」
「部員達に教えてほしい」
「……」

雪村は一息つくと水筒のコップに湯気を出しながらお茶を注ぐ。
ふーふーとコップに向かって息を吹きかけた後一気に飲み干す。

あーこれ雪村おとなしタイム終了の合図だ。

「いいけど……マネージャーじゃなかったの?」
「どっちも」
「え、」

「どっちも」

眉間に皺を寄せぎらぎらとこちらを睨む。
段々顔は「わかんねぇのかよ」と蔑んだものに変化していく。
何様俺様雪村様のご降臨だ。

「つまり雪村は私にマネージャーをやる上に選手の練習に付き合えと」
「そうだ」
「なんでそんな無茶苦茶なの」

こいつ私より頭いい癖に馬鹿だ。
人のことを考えられない馬鹿だ。
私の心の中では何言ってんだこいつという感情で溢れる。
雪村は何を勘違いしたのかふふんと鼻を鳴らしてドヤ顔で私を見つめている。

「え何名無しは俺にデレてほしいのか」
「何突然雪村気持ち悪い」
「……」

さぁ皆避難しろ。

雪村は私の筆箱から鋏を取り出した。

何刺されるの。「俺を愛さないからだ!」とか言われるんだろうか。

ちょき

……ちょき?

「えっ雪村!?何してんの」
「枝毛が気になったから切ってやった」
「どういう神経!?」

というか視力いいなお前。あぁそういえばこの間の健康診断で2.0だって喜んでたっけ。


て脱線している場合じゃない。
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