京介が

□共犯者
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「京介」
「ねっ姉ちゃんっごめん俺っ」
「悪いのは姉ちゃん」
「……え」

京介は私の顔を見て涙が止まる。
あまりにも急な発言で驚きの方が勝ったのだろう。

「見てるだけで何も出来ない姉ちゃんのせい」
「そんなことっ」
「じゃあ悪いのは京介?」

私が真面目に京介の顔を覗き込むと京介はまた泣きそうに唇を噛み締めた。
私はぎゅっと京介の小さな手を握りしめる。

「ねぇ京介」


知ってる?

この場合京介が悪いのは勿論だよ。
でもその場でいて何もしなかった私も悪いんだって。
父さんの本に書いてた。嘘じゃないよ私見たもん。ほうりつってやつで決まってるんだって。
京介と私みたいな関係を「きょうはん」って言うんだって。
そう。きょうはん。私達はきょうはんしゃなんだってさ。
だから私と京介がどっちも悪いの。罪を半分こだね。
二人で罪を償おうよ。



私はこの時どんな顔してこんなことを言い出したのだろう。
何処でそんな知識を得たのか、それが定かだったのかは分からないが京介を安心させるには十分すぎる材料だった。
少し笑顔になった京介は兄さんが病院に運ばれて足が動かなくなった事実を聞かされて落ち込んだが、私との「きょうはん」にすることで京介はあまり崩れずに済んだ。
だが私は大きな失態をしてしまったのだ。
京介が自分のサッカーを潰してでも兄さんの手術費を手に入れようとしているとは思わなかった。








「何でそんなに頑張るの」

隣で安心したように寝ている京介の髪の毛を優しく梳く。
自分よりも頑張っている2歳離れた弟にもどかしさを覚える。

私と京介の罪滅ぼしはその日から始まった。
二人で計画して私は剣城家のお金を出来るだけ兄さんに回すために我儘を言わなくなった。
京介も同じようでしばらくサッカーをしなくなって家で我儘を言わなくなった。
それから親や兄さんに心配をかけない。
どんなにクラスで一人ぼっちだろうが苛められようが黙ってること。
絶対に勉強を怠らないこと。兄さんが入院して学校で勉強が出来ないのに通っている私達が出来ないのは兄さんへの侮辱だ、ということになった。
その他様々な制約が私達の間で決められた。

ただし、このルールは姉弟の間では適用しない、ということも決めて。

「京介が辛そうなの私やだよ」

いつも頑張っている弟があまりにも可愛くて頭を撫でながら抱き締める。
優しい兄さんが好き。頑張ってる京介が好き。
でも辛そうな二人を見るのは嫌い。

寝ている京介を見つめていると長い睫毛が揺れて猫のような目が現れる。

あ、京介起きた。


「ねっ……さん……?」
「京介……?」
「俺っ寝ちゃったのか……?」
「うん、電気付いてたみたいだから消すね」
「姉さん」
「おやすみ京介」

私は立ちあがって自分の部屋に帰ろうとする。
が、京介はそれを許してくれない。
立ちあがったところで後ろから引き寄せられて京介に抱き締められる形でベッドにダイブした。
京介が着ているシャツが若干汗ばんでる。嫌な夢でも見たのだろうか。

「京介……」
「やだ」
「どうしたの」
「姉さんっ」
「京介」
「いなくならないでくれ……っ」

きっと夢で私が居なくなる夢でも見たのだろう。
そんなの私も嫌だ。
もし私が京介の立場だったら、考えるだけでも不安でいっぱいになる。

「大丈夫私は此処に居るよ」
「ねっ……さん」

安心させるために涙目の京介の瞼に軽く唇を寄せる。
その後ばちっと京介と目が合ってまた力強く抱き締められる。
相当夢が怖かったようだ。
おまけに起きたてで思考回路が上手く機能してないらしい。


「姉さんは、俺のだろ」
「うん」
「いなくなるなよっ」
「……うん」



泣きじゃくる君に私は何処まで弱いのだろう。








(姉さん一緒に寝て)
(電気消すね)
(逃げんなよ逃げたら殺す)
(逃げないよ!!どんだけ私薄情!!)
(姉さん)
(ん?)
(でこちゅーして)
(お……おぉふっ…何これ可愛い)









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3話目にしてどシリアス。最後は甘くしたかった。どういうこっちゃ。・ω・
多分こういうのを共依存って言うんだと思う。京介はそんなわけで姉さんにだけ感情オープン。

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