京介が

□人生相談
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出来るだけ京介を刺激しないようにゆっくりと優しい口調で話す。

「サッカー楽しくない?」
「違う」
「雷門中学サッカー名門でしょ?不満?」
「……違う」
「新しいチームに入るの不安?」
「違う」
「……」

どう言っても京介はただ首を振って否定するばかり。
その姿が何だか痛々しい。

この子は……


京介は小さい頃自分のせいで兄さんが足を動かせなくなったと思いこんでいてそれ以来あまり笑顔を見せなくなった。
はしゃぐことは無くなったし1人でいるようになった。
当時はサッカーもしなくなったし病院に行って兄さんにずっとごめんと謝っていた。

京介が悪いわけじゃないのに。

私は幼いながらも溜め息をつきながら京介の横に立っていた。
これは慰めでも何でもない。
単純にそう感じたからなのだが京介は私のその言葉を頑なに拒否する。

全部自分が悪いんだ、と。


何様のつもりだろうか。男と言うのは皆こういうものなのだろうか。

今だってそうだ。


何があったかは知らないが全部自分のせいだと思い込んで溜めこんでしまう。
こんな状況が続いては京介が爆発してしまいそうだ。
家庭内暴力とか……やだなぁ。


という結論を出した私は京介にとって禁句だと言える言葉を京介に向かってぶつけることにした。


「フィフスセクター」
「っ」
「シード」
「……ねっ」
「違う?」


京介の顔が勢いよく上げられる。
信じられないと言いたそうに口は半開きになって目を見開く。

私が知らないとでも思った?
フィフスセクターがどんなサッカーを求めてるか知ってるよ?
この間選抜合宿だっていったあれ、シード関連だったんじゃないの?

無表情でつらつらと言葉を並べると京介は今にも泣きそうな顔で「すまない」と仕切りに謝る。

違うよ、京介、そんな顔させたいんじゃない。

だって京介は好きでフィフスセクターに入ったんじゃないんでしょ?



辛そうな顔をする京介をそっと優しく、抱き締める。
あ、ちょっと肩あたりの服湿ってきた。
泣いてるんだ、京介は相変わらず泣き虫だね。


「私は京介が決めたことなら何も言わないよ」
「ねっ」
「でも京介が傷つくのは嫌」
「……」
「せめて悩み事があったら姉ちゃんに言って?」


あーあ私の偽善者。
結局私は京介のことで責任が持てないからただ見守ってるだけなんだ。
優一兄さんならこういう時何ていうんだろう。

心の中でもやもやしてると京介が目と鼻を真っ赤にしてこちらを見つめて、

顔が段々近付いてきて、


……


「そうだな、姉さんとは"きょうはん"だもんな」
「……京介」

まだその言葉覚えてたの。というか

「今何でほっぺにちゅーしたの?」
「教えない」
「何それ」
「ヒント、俺は姉さんが好き」
「うん知ってる」
「……そうか」
「だから何」



結局全て京介に「さぁ整理するか」と流されてしまった。

え、何が不安だったの。









(教えてくれてもいいじゃない!!)
(雷門入って悩んだら相談する)
(夜遅くても相談してね)
(子供か俺は)
(弟がいつまでも甘えただから子供扱いは当たり前!)
(よしこっち来い)
(擽りは勘弁してください)








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え、シリアス?……甘くしたつもりなのに。次は過去編書きたいな。
「人生相談」のくだりは俺妹です。姉ちゃん友達から本借りました。

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