京介が

□人生相談
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「姉さん」


京介の入学準備を手伝いに部屋に入った途端、京介は床で正座をしていた。

え、何、お前準備は?

京介の背後を見ると整った教科書が置かれていた。
これは整理した後なのか前なのか、よくわからないけど……

私何のために呼ばれたの?

今日は折角スカートにしようと思ってたのにショーパンに履き替えた努力はっ!!

京介を睨むと京介も私を睨んでいる。
あ、何これ腹立ってきた。

「何?」
イライラしながら怒気を含めて声を発すと京介の口から意外な言葉が出た。


「人生相談があるんだが」


「……」
「……」
「京介」
「何だ」
「もしかして私の借りてる本見た?」
「……いや?」

危ないっ!!物凄く危ない!!
友達から興味本位で借りた本見られてると思った!!
これ肯定されたらお姉ちゃん逃げ出して2、3日家出するところだった!
まさか実の上の兄弟に「人生相談」というものを真顔で持ちかける下の子がいるとは……。
どうした京介。
お姉ちゃんは京ちゃんの今後が心配です。


「で、聞いてくれるのか」
「えっうんいいよ」
「そこ座れ」
「はーい」

ベッドに誘導されて大人しく座ると京介も私のすぐ横に座った。

……え?

普通向き合って相談するもんじゃないの。

え、どうして手を握るの。京介まじ意味わかんない。
今日の紫のパーカーお姉ちゃん好きだよ!!
てんぱってきてよくわかんなくなってきた。

「姉さん」
「何」
「制服が学ランってどうだろう」
「え、雷門の制服学ランでしょ?」
「いや」

京介が真顔で差し出してきた制服は一言で言えば、ダサイ。
これ以上に無い程ダサイ。
京介の服のセンスも心配になってきた。
うん。普段の私服はかっこいいんだけどね。


まずツッコもう。


「私の借りたDVD見たでしょ」
「……」
「図星か」
「面白かった」
「当たり前だ」

まさか一昔前のドラマが見たくて借りたDVDが仇になってしまうなんて……!!
そういえばこんな感じの学ラン主人公のライバルが着てたな。

どうやら京介は学校で一匹狼になりたいらしくまずは見た目から、ということらしい。
どんな事情かは知らないが自分から離れて行く子初めて見た。

……何だろう、京介に対して毎日毎日不安が募っていく。


「規則では大丈夫なの?」
「……問題ない」
「……」
「……」
「何か隠してるでしょ」

京介は嘘をつくとき目を僅かに揺らす。
姉ちゃんが見破れないとでも思ったか!!
ドヤ顔で京介を見つめると溜め息をつかれた。
こいつ、何。


「姉さん」
「さぁ早く吐いちゃいなさっ」




ふわりと京介のシャンプーの匂いが鼻腔を擽る。
目の前には京介の後ろ髪であるはずのふわふわの髪がある。


……あれ?私今何されてる?

「ごめん姉さん」
「謝るなら離れて」
「嫌だ」
「さいですか」

何故か腰に手を回されて首辺りに顔を埋められた。
どうしたほんと。
京介の声音から予想するに多分今泣きそうな顔してる。
あ、成程。顔を見られたくないのか。

何はともあれ京介の匂いがして安心する。
何となく甘えさせてやりたい気分になって京介のやわらかい髪を梳いてやると擽ったそうに身を捩る。

あーはいはいくすぐったいのね。
でもやめてやるもんか。
ゆっくりとゆっくりと梳く。
せめてもの悪戯だ。

「姉さんっ」
「何?」
「やめてくれ……」
「京介」
「だから」
「サッカー、楽しい?」
「っ」


あらやだ

図星突かなくていいところを突いちゃった。
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