ロンドニア!

□絶望
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運の悪いことにロシウスのバイオレットデビルに出会ってしまった。
バイオレットデビルはロンドニアの機体を次々とロストしていく。
相変わらず残忍非道な戦い方だ。せめてブレイクオーバーにしてあげればいいのに。
彼はこの戦場で最も戦士らしく、最も戦士らしくない。私はそう直感している。
出会った機体全てをロストする人物であるはずなのに何処か詰めが甘いのだ。
私はスコープでバイオレッドデビルに照準を当てる。早々退場願いたい。
これ以上戦力が減るのは得策でない。
だが私のライフルがバイオレットデビルを狙うことは許されなかった。

「どうした!」
「ガウンタとグレイリオが此方に接近!ごめん!バイオレットデビル狙えない!」

ガウンタとグレイリオに囲まれた…!
どうやら敵はこちらに戦力を投じてきた。
しかもこの二機はバイオレットデビルの小隊のものだ。実力もかなり高い。
これはかなり時間がかかりそうだ。
ライフルから二丁剣へと武器変更し、向かってきたガウンタとグレイリオの攻撃を横へ流し軽く反撃する。
背後から槍が向かってくる。挟み撃ちのようだ。
上に逃げると狙っていたかのように前のガウンタは同じように跳び、剣を振り下ろす。
此処で負ける私ではない。空中で避けて背後から剣を勢いよく下ろす。ガウンタとグレイリオ同士がぶつかり合い鈍い音が響いた。
相手はかなりのダメージを受けたようでフラついていたが流石実力は高いだけにすぐ持ち直し攻撃を仕掛けてくる。

「ごんべ!大丈夫か!」
「何とか!そちらの状況は!」
「……かなり押されてる」
「了解!撃破次第そちらへ向かう!」

タケヒロの様子だとかなりロストされたのだろう。
内心焦りを隠せない私だった。だが私は今、ガウンタとグレイリオに狙われているのだ。
何とかこの二機を倒さなければ。
頭が急激に冷え、冷静に、確実に敵機体に攻撃を加える。
それからガウンタとグレイリオを倒すのにはそう時間はかからなかった。
焦る気持ちを余所に私はフラッグへと機体を動かそうとした時だった。
通信が入る。相手は野見先生だ。

「何ですか」
「てっ撤退だ!!今すぐ撤退しろ!!」
「え……」

何でですか、と言いたかった。
あともうひと押しすればもしかすればバイオレットデビルは倒せるかもしれない、私はそう言いたかった。
だが冷静に考えてみればこの領地にはかなりの人数が投じられていたはずだ。
それにも関らずこの悪戦。これから誰かがバイオレットデビルを倒せる保障も無い。
ロンドニアの戦力が減るだけだ。それに今残っているメンバーを失うことはロンドニアが打撃を受ける。
冷えた頭が「撤退」という文字をより鮮明にさせる。

「……了解」

それから各小隊長に撤退命令を下し、自分の小隊にも伝える。
皆歯痒い思いをしていることだろう。
ロシウスが敵に易々と領土を奪われるのだから。
恐ろしいものだ、バイオレットデビルというのは。

全員クラフトキャリアに乗り込んだ事を確認すると私もクラフトキャリアに乗り込もうとする。
ふと背後に視線を感じ私は振り返る。
バイオレットデビルがこちらを見ていた。
え、何、私何かしたのだろうか。ガウンタとグレイリオを倒したのがいけなかったのか。
でもブレイクオーバーだから大丈夫だよ!!
怖くなりそそくさとクラフトキャリアに乗り込む。
その後フラッグが占領された警告が私達の耳に響いた。




コントロールポッドから降りた私達はロストした生徒の所へ向かう。
ロストした生徒は心此処に在らずの者も居れば無理に笑っている者も居れば泣いている者も居る。
何にしろ私は酷く心に何とも言えない感情が生まれた。
私のせいだ、私がちゃんとしていれば。
思いが溢れて思ったことがそのまま言葉に表れる。

「……ごめんなさい、私がちゃんとバイオレットデビルを狙っていれば」
「隊長のせいじゃないよ!!」
「そうだ!全部あのバイオレットデビルのせいだ!」
「でも、接近してきた機体に気をとられて自分の役目を果たせなかったのは事実で……」

涙が出そうなのを必死で堪え、言葉の最後には俯いてしまった。
皆こちらを凝視する。
もしバイオレットデビルを狙撃出来てこちらに注意を引きつけることが出来れば彼等はロストせずに済んだかもしれない。
そう考えると心が霧がかかったような気持ちになるのだ。


「隊長、俺隊長と同じ仮想国で良かった」


ロストされた誰かがそう呟いた。皆顔をお互い合わせ再びこちらを向く。

「私も、気にすることないよ隊長。これが現実だもん」
「僕達の実力が足りなかっただけさ……隊長の力不足じゃない」
「あんたが同情しようっていうのがそもそもおかしいの」

励ますつもりが、逆に励まされてしまった。
私馬鹿だな。何が隊長だ。周りを不安にさせてどうするんだ。
気を取り直して私は彼等の方に真っ直ぐ顔を向ける。
泣きそうな顔で必死に笑顔を作って彼等に笑いかける。

「お疲れ様」

皆悲しそうだったけど、それでも笑っていた。
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