ロンドニア!

□ある生徒の考察
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※モブばっかり



突然だが俺はロンドニアのある男子生徒だ。
特に強くもなく、かと言って弱くもなく。まぁ少なくとも大会優勝経験は3回以上はある位には強い。



思えば1年前のことだ。
意気込んで神威大門に来てエリートばかりが集まるというロンドニアに所属した。
元々プライドが高く1年前の俺は自分がかなり強い部類に入ると思っていた。
始めてのウォータイムでも忠実に任務をこなし、授業も難なく切り抜けた。

だが僅か1週間で俺のプライドはズタズタにされたのだ。


名無しのごんべという存在によって。



彼女は俺より1年前からこの神威大門に居るらしくウォータイムでの場数も知識も何もかもが俺よりはるかに上回っている。
そんな奴はクラスに何人も居たのだが、彼女はレベルが違った。

名無しのはロンドニアでは色んな意味で異質な存在だった。
性格は自分に自信がないというか謙虚な奴で素直。
のくせに戦況を左右する小隊長に1年の頃から就いているらしい。その性格でよく任命されたな、というのが正直の感想だった。
しかもロンドニアのエース石川タケヒロとかなりの実力を持つ安土モモコの小隊の隊長。
隊長なら寧ろ石川タケヒロの方が適任だと思う。
誰がどう見ても実力はあるし、はきはきしていて隊長に向いている。……少し意地の悪い奴だが。

まだ一度も名無しのと一緒の任務に当たったことが無いが普段から見ていてもとても人の先頭に立つようなタイプとは思えない。
隊長ならもっと皆の先頭をきって堂々としているべきなのに名無しのは周りにフォローしてもらってばかりだ。
日常でヘマは頻繁にするし成績も二人に比べて並で授業中たまに寝ていたりする。
なのに周りは悪口一つ言わない。
何故だ。
疑問に思った俺は転校直後から何かと話しかけやすいアンディに話を聞いてみた。


「なぁ」
「ん?何だい?」
「名無しのって普通なのに何で小隊長なんだ?」

俺の質問にアンディは目を大きく見開いて瞬きしながらこちらを見た。
数秒目が合った後、アンディは急に笑い出す。
な、何だよ!!俺おかしいこと言ってねぇぞ!!
と言うとアンディはまだ笑いながら違う違うと手をひらひらさせて答えた。

「最初皆同じこと言うんだよ、何で頼りなさそうなごんべが小隊長なのかって」
「事実だろ、あいつ弱そうじゃん。いつもぼーっとしてるし」
「あはは」

確かにごんべはぼーっとしてることが多いね!授業中の様子見てると面白いよ!とアンディは楽しそうに話し、急に目を細める。
俺はそんなアンディに少し恐怖を感じた。
アンディは不敵な笑みで名無しのを一瞥し、その表情のまま俺の方に顔を向ける。


「そのうち分かるんじゃないのかな、名無しのごんべが」



ぽかんと口を開けているとアンディはいつもの人懐っこい笑顔でにこっと笑い「他の人にも聞いてみるといいよ!あ、でもタケヒロとモモコには聞かない方が良いよ!」と言って去って行った。
何故二人には聞いてはいけないのだろうと思い当の本人達と目が合い理解する。
二人は凄い形相で俺を見ていた。俺とアンディの話を聞いていたらしい。
ぎょっとして俺はそそくさとその場を去った。


他にも何人か同じクラスの奴に話を聞いてみたが皆口を揃えて「見ればわかる」「そのうちすぐに分かる」と言う。
何だか狐につままれたような気分だ。
直接本人に聞いてみても不思議そうな顔して「私も何で自分が小隊長なのか分からない」と言いだした。

「お前が分からなかったら誰が分かるんだよ」
「いや、皆買い被り過ぎてるんだよ私そんなに強くない…というか上は探せばいくらでもいるし」
「そうだよな」
「私普通だよ?」
「それは見ればわかる」
「LBXもタケヒロみたいに強いのじゃなくて支給されたパレスガーダーだし」

ほら、と名無しのは皆とは少し違うロンドニアの汎用LBXパレスガーダーを俺に見せた。
きっとメカニックの奴が色々いじっているのだろう。若干パレスガーダーが女らしくカスタマイズされている。

「お前スナイパーじゃなかったっけ?スナイパーなら普通ワイルドフレームだろ」
「皆大体そうらしいね、でも接近された時は剣使うからこっちの方がやりやすい」
「接近されんのか」
「うーん、敵が多いとそうなっちゃうよね…」


ますます何で名無しのごんべがあれだけ評価されているのかが謎だ。
接近されることが頻繁にあるスナイパーが何故評価される。
ましてやロンドニアの人間は大体プライドが高く他人をちょっとやそっとで評価したりなんかしない。
名無しのごんべは一体何がそんなに凄いのか。


心に蟠りを抱えながらブリーフィングを聞いていると今日は名無しのと同じ任務にあたることになった。
敵襲に備えてフラッグの護衛で名無しの以外は前線に出される。



白黒はっきりするいい機会だ。
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