ロンドニア!

□新学年
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「あ」



プロのLBXになると決意し、神威大門統合学園高等部に入学してから早2年。
ウォータイムでは西ヨーロッパ一帯を占めるロンドニアに所属してからも早2年。
何故か入った直後に小隊長に任命されてからも早2年。
未だに何故私が小隊長なのが謎だ。もっと強いプレイヤーはたくさんいるのに。

そんな私も遂に高三になり、この学園に来て3年目に突入しようとしている。
今年も同じロンドニアだったのはよかったのだが一つ問題が発生した。


「タケヒロとモモコと離れた…」


この2年間ずっと行動を共にしてきた親友と小隊が離れてしまったのだ。
解せぬ。後で野見先生じわじわ追い詰める。

どうやら新しい小隊が編成され私はそこの小隊長として任命されたらしい。
だがまたもや違和感を覚える。
私の小隊のプレイヤーが一人足りないのだ。

首をひねって掲示されている紙に書かれた文字を睨みつける。
しばらくして急に自分の肩に誰かが手を置いた。

「ごんべ先行くなよ」
「あ、ごめん」

振り返ると親友のタケヒロとモモコが後ろに立っていた。
先程私の肩に手を置いたのはタケヒロのようだ。
心なしか二人の息は上がっているように思える。私が居なくなったと思って探してくれていたのだろうか。
それが何だか申し訳なく思えてもう一度「ごめん」と呟くとタケヒロに頭をぐしゃぐしゃと力強く撫でられた。
髪型、髪型が崩れる。
内心焦っているのをモモコは察してくれたのかタケヒロの手を叩き私の髪の毛を撫でつけて元通りにしてくれた。
モモコにお礼をいうとふっと嘲笑したような、だがしかし穏やかな笑顔を向けられる。

この二人のこういう所が好きだ。
一見人を見下したように行動する二人だが親しい者にはこういった優しさが混ざる。
1年目は色々と苦労したが段々仲良くなるごとに二人に居心地の良さを感じていた。

だが、それも今日で終わりだ。
私はこの居心地の良さを手放さなければならない。


「どうせ今年も俺等一緒だろ」
「ごんべが小隊長でメカニックが……」
「……」
「……」
急にタケヒロとモモコが言葉を発するのを止め、掲示してある小隊分けの紙を先程の私のように睨みつける。
「…ごんべ、これ……」
「離れちゃったね」
タケヒロが信じられないものを見るような目をこちらに向けたので私は出来るだけ平静を装って答える。
あんまり騒ぐと私と入れ替わって入った子が可哀想だからだ。
それに野見先生を非難したいが野見先生も何の意図も無しにこのようなことをする人ではない……はず。

きっと私よりも賢いタケヒロとモモコなら分かってくれる、そう信じて私は何も言わない。
同じクラスであることは変わり無いしこれからも仲良く出来る。

「これからも仲良くしてね」と言い去ろうとしたらモモコに両腕を強く掴まれ身動きがとれなくなった。


「大丈夫よごんべ。私達の小隊長は貴方だけよ」
「ちょっと野見殴ってくるわ」
「タケヒロやめたげてっ!!」
タケヒロが教室の箒を片手に肩を回して教室を出て行こうとしたのでモモコを軽く振り払ってタケヒロに抱きつき制止する。
タケヒロは「うぉっ」と素っ頓狂な声を上げてその態勢で固まった。

うわぁぁぁぁやっちまった!!高三にもなって好きでもない人に抱きついてしまった!!

自らの失態に気付いた私はすぐさまタケヒロから離れモモコの後ろに身を隠す。

「ちょっと抱きつかれたからって良い気にならないでタケヒロ」
「うるせぇモモコ」
「この童貞が」
「死ねサド女」

ぎゃあぁあぁっ!!タケヒロとモモコが口喧嘩始めてしまった…!!
周りの皆は「またか」という顔でこちらを見ている。皆の順応力が怖い。

私がわたわたと文字通り右往左往していると後ろからこの教室に似合わない明るい声が飛んできた。


「やぁごんべ!君と僕が入れ替わりになるけど仲良くし」
「アンディぃぃぃっ!!」
「わ、どうしたんだい君に抱きつかれるとタケヒロとモモコが」
「アンディてめぇぇぇっ!!」
「ぎゃあぁあぁ!言わんこっちゃない!」

新しいタケヒロとモモコの小隊仲間のアンディ・ロックハートが助けてくれた。
正確には火に油を注いだようなものだけど。
アンディはこのプライドが高い子が多いロンドニアでは私と共にかなり異質な存在だ。
優しくて明るい。小隊は違ったがすぐに仲良くなれた。
そんなアンディがタケヒロとモモコの小隊になったのだ。きっとあの3人は上手くやれるだろう。
私はというと少し心配だが見渡す限り殆どお馴染みのメンバーで新しい小隊の人達も私を知っていてくれた。
何だか少し、嬉しい。



しばらくしてチャイムが鳴って野見先生が入ってきた。
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