天地創造

□夕焼け
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「…ク?」

 う…
 すぐ横に人の気配がする。

「アーク」

 うん。もう少し だけ。
 お願いだから、揺らさないで くれ。

「ねぇアークったら、ここで眠ると
 風邪ひいちゃうわよ?」

 …?エル。
 そう、教えてあげなきゃ。
 周りの森の先には草原が広がっていることを。
 そこはとても寝心地が格別であることを。
 いつか エルを連れて行ってあげよう。

「でも、ここも とても気持ちいいわよ?」

「…エル!?」
意識がはっきりしてくると隣にエルがいた。
一瞬草原にたどり着いたことが夢だったのかとあわてて起き上がり あたりを見回した。
日が傾きかけている以外変わりがないようだが

「どうやってここに来たんだ?」
そう、オレが半日以上走り回って
やっとの思いでたどり着いた草原にエルがいる。
キョトンとしたエルは「歩いて来たわよ」と
答えた。
アークが帰ってこないから心配して探したの、と微笑んだ。

疲れすぎて幻でも見ているのか?
しかし目を擦っても 
幻のエルは消えるそぶりを見せない。


「ハ ハ …ブシュ」
「ほら、アーク。くしゃみしてる」

幻は「冷えて来たね」とクスクス笑い
自分の肩に掛けていたマントを広げて
オレも入れてくれた。

オレはその温かさにエルが幻でないと
理解したけど、混乱していた。

何でここにエルが居るんだ?
混乱しているオレを不思議そうに見上げるエル。

「どうしたの?いつもおかしいけど
 今日は特にヘンよ。アーク。
 ほら、早く帰りましょ」

マントごとオレを引っ張るように進むエルが向かう先は
森の方じゃなくてその先に進んだ。
そこには見慣れた 占いおばあさんの家が見えてきた。



「…結局新天地はオババん家裏の庭だったのか」
夕日が二人を照らしている。


『また、なにか やらかしたのかい?』
喋るカボチャだけが二人の影が
ひとつ、長く伸びているのを知っていた。



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