夢や憧れを抱いてた








あの頃....










陽光のなかで、感謝を









暑くもなく寒くもない、ぽかぽかの陽気。



太陽の香りまでしてきそうな、優しい陽光。





こんな日こそ、と干した洗濯物が緩やかにはためいている。



その中に見慣れた服が一着。




彼が昔から着ていたレギュラージャージ。




今でもテニスをする時は時々着ることもあるそのジャージは、彼がきっと中学生の時、制服と同じくらい着ていたもの。




‥そう、私の中で彼とテニスは切り離し難いもので。




時々、嫉妬したくなるほど彼が夢中になっているものだった。





強過ぎた彼は、本気になる前に勝ってしまうからかテニスを本気ですることは滅多になくて。



相手の力を限界まで引き出してスリルを楽しむ――――――勝敗に執着することが出来ないみたいなんだ、と彼はかつて言ったけれど。




いつしか芽生えた勝利への執着のために並々ならぬ努力をした周君。





最後はきちんと勝ちを掴んで、全国大会優勝を手中にして。




どんどん強くなっていくから‥時々、不意にあなたを遠く感じることもあったけれど。




それでも、いつも振り向いては微笑んでくれたから‥







「どうしたの?ぼーっとして」




不意に聞こえた柔らかい声に振り向けば、周君はそっと私の隣に腰を下ろした。




彼の色素の薄い蜂蜜色の髪に優しい陽光があたって、煌めいていて。



思わず、見惚れてしまう――――――








「‥ちょっと、感慨に耽ってたの」


「感慨‥って」


「あのジャージ、周君もう6年も着てるんだなぁって‥」



干してあるジャージに視線を向けてそう言えば彼もそっちに柔らかい視線を向けて。




「そうだね。‥長いや。物持ちいいよね」




くすっと笑って私の顔を覗いた。




「物持ちの話じゃなくて!」


「わかってるよ。‥色々な想い出があるもんね」


「‥からかわないで」


「ごめん、ごめん。感慨に耽ってる君が可愛かったから、つい」




膨れた私に彼はそっと肩を抱いて



リップサービスも欠かさない。




でも、そうだとわかっていても嬉しくて‥





甘やかされてると思う。




彼の体温さえ甘く感じて、体中で幸せが溢れてくる。




「‥そんな上手いこと言っても許してあげない」




心は素直。



でも、‥ううん、だからこそ、口は臍曲がりなの。




「じゃあどうしたら許してくれる?」




もう何年も隣にいる彼にはそんなことはお見通しで。



言葉とは裏腹に楽しそうに私に聞いて。




重なった視線に、目を閉じれば。





そっと、キスをくれた。






「周君‥」





陽があたって一枚の絵みたいに整った彼の顔が神々しく見えて。



とくんと揺れた体の奥。




彼は私の髪を指で梳きながら啄むようなキスを何度も何度も降らせて。





なにもかもが、彼で一杯になる。






「あのジャージでも、こうやっていっぱいキス‥したわね」


「あぁ。休憩中とか皆に見つからないかはらはらしながらね」


「周君はばれてもいいって思ってたでしょ?」


「そんなことないよ?」






いつも通りの微笑でいつも通りの白々しさ。




あの頃から全然変わらない。




青と赤と白の眩しい青春色。



彼がその色を身につけて、闘ったあの頃がもう懐かしいと思えてしまうほど時は経ってしまったけれど。






「あの時も言ったけど、全国大会優勝おめでとう」





ずっとずっと応援してた。



優勝した時は嬉しいのか悲しいのかわからないくらい大泣きして。




「‥あの時も沢山言ってくれたよね」


「そうだっけ?」


「そうだよ。凄く、嬉しかった」





ぎゅっと力を込めて



今度は両手で抱きしめられる。





蒼い瞳。



優しく 深く


体の奥まで貫かれるような感覚。







「‥昔も今も、ずっと好き‥っ!!」







言葉を紡ぎ終わる前に、塞がれる、が正しい表現のように唇を奪われて。




少し苦しいけれど‥





凄く幸せ。












今があるのは、過去があるから。







青空の下、はためいているジャージ。









あの時の周君にも




そして、今ここにいる周君にも






永遠を信じられるほどの愛をくれることに


















陽光のなかで、感謝を――――――――――

















End..












9年間に及ぶ連載を終了された許斐先生に、そしてそれよりも今まで私の生活の中心に居続けた不二君に、感謝をしたいと思います。



今までありがとうございました。


そしてお疲れ様。




‥でも、私はこれからもずっと周君、あなたのことを好きでいます!!


これからもよろしくね。



拍手ありがとうございました。






2008年3月29日


君の言葉聞きたいな



[TOPへ]
[カスタマイズ]

©フォレストページ