short story

□もう恋なんて
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恋なんて、そんな面倒くさいものはしないほうがよい。
ほんの些細なことに浮かれて傷付いて、そのうえ周りさえ見えなくなる。
無駄な葛藤、無駄な労力。
端から見れば、実に馬鹿馬鹿しいうえ痛々しい。



けれど、そもそも、これは恋だったと言えるんだろうか?
思い返してもみよ、プーとさして変わらぬ怪しげな職業、万年金欠にもかかわらずギャンブルはやる、目は死んだ魚で、おっさん臭はするし、頭はアインシュタインばりのもじゃもじゃだ。
そんな男に、このわたしが恋?
いや、ないだろう。

だって、たとえ、やるときはやる男といえど、恋愛に関してのあの奥手っぷりはどうだ。
わたしのアプローチにもかかわらず手も伸ばさない、わたしの全ての努力を無に帰すようなヘタレ具合。据え膳食わぬは侍じゃないんじゃないか馬鹿。
ああ、でもどうだろう。
単にわたしが相手にされていなかっただけなのか。




いえ、そうではないはず。
呼べばちゃんと答えてくれて、ドSというわりには優しくて。
最後まで優しくて。


「俺がもう少しちゃらんぽらんじゃなくて、真面目だったら良かったんだけどよ」


なに、それ。
うまくいかなかったことを(確かにそうではあるけれど)、自分のせいだけにしないでよ。
わたしが悲しくなるじゃない。
わたしを責めないで、なるべく傷つけないようにする、そんな優しさがわたしを一番惨めにした。




……馬鹿馬鹿しい!
今更想いに苦しんだって何の意味もないのだ!
これぞ、恋の最大の無駄!



ああ、でも、こう苦しむあたり、やっぱり私は彼を好きだったらしい。



苦痛ばかり残す、恋なんてもうするものか。














「おい、そこの女子。どうした」







「そう泣きながら歩いていては、なにも周りなど見えておらんだろう。危ないぞ」







「いや、全然良くないから。さっきから立て続けに三台の車がクラクションを鳴らしながら貴様を避けていったのさえ気づかなかっただろう」







「仕方ないな。とりあえず涙を拭け。ああ、そうとめどなく涙を流すな。泣き止むまでしばらくここで休んでいけばいい」





その人はとてもまっすぐな目をしていて、死んだ魚なんてとんでもない、常に煌めきを宿していて。





……もう!



恋なんて、したくないのに!





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銀さんから桂さんに流れる攘夷ハンターでした
泣いてるわりには意外と耳軽女。
まぁ桂さんの魅力にはあらがえないよね。

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