―本棚―

□サクラ舞う
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「綺麗だね。」
「八分咲きってとこだな。」
「でも綺麗だよ。」
 会話の合間にも雪兎はすでに2本目の団子を手にしている。桜が綺麗だと言いながらきっちり食べる雪兎に、桃矢は苦笑した。
 春の日差しのお陰で寒くはない。見上げた空の青と桜のピンクが確かに綺麗な色合いを出している。
「たまには、こういうのもいいね。」
 男のクセに花が開いたように雪兎の笑顔は眩しい。
「ゆき。」
「んっ」
 名前の通り雪のように白い手首を掴み、顎を持ち上げる。さすがに突然で驚いたように一瞬声を上げたが、唇が重なると雪兎が力を抜いたのが分かった。
 かわいいやつ。
 口内に舌を入れると、さっき食べた団子のせいか、いつも以上に甘く感じた。
「……なんだか、恥ずかしいね。」
 苦しそうに息をしだしたので解放してやると、心なしか少し頬を染めた雪兎が言った。
「なんで。」
 人気がないのだから別に人目を気にする必要はない。桃矢が聞き返すと、雪兎は困ったように笑った。
「だってほら。」
 そして空の方を指差す。
「さくらちゃんに見られてるみたい。」
 薄紅色の花びらは、ひらひらと少しずつ二人の足下に落ちてきていた。

〜END〜
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