―本棚―

□winters novel
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塞がれた唇と、見開いた瞳。その瞳には陸王の独特だが綺麗に整った輪郭と、顔の部位が見える。
「ンー……ふぅ……ん……」
鼻から抜ける吐息が甘ったるくなっていく。いつの間にか無意識に目を閉じていたせいですべての感覚が口腔に忍び込んできた陸王の舌に集中する。
「ん……ふは……はぁ……。なにするんだよ!?」
雪の降った日の外で、誰かに見られているかもしれないのに。顔を真っ赤にして、陸王のマフラーを持ち主に投げつけながらそう怒鳴ると、「お前が悪い。」とわけのわからない言葉で一蹴された。
手足が長いから、落としたマフラーを拾うただそれだけの動作でも様になる。
その動作についつい見入ってしまい、ますます顔が赤くなる。
「ほら、早く店に入るぞ。花蛍が起きる。」
「わかってるよ!!」
これ以上何もいっても言い返されるだけ。そう判断した風疾は、せめて店に入る順位だけはとでもいうように、陸王が入ろうとして開けたドアから真っ先に店に入り込んだ。
「……バカだな。」
くすりと笑いながら言われた言葉に、風疾は「うるせー!」と返すことしかできなかった。

〜END〜
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