―本棚―

□サクラ舞う
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ccさくら 桃矢×雪兎

『サクラ舞う』

長い冬を越え、歩くたび目につく街路樹からは薄紅色の小さな花びらが、時折通行人の肩や頭へ悪戯に乗っかった。
「雪、付いてる。」
「あ。ありがとう、桃矢。」
雪兎の肩に付いた桜をひょいと取って桃矢が言った。
「もうすっかり春だね。お花見したいなぁ」
「お前がしたいのはお花見じゃなくて、そんときの弁当だろ。」
「あはは。でもお花見もしたいよ。」
も、ということはやはりメインは花見弁当の方らしい。つくづく食い気が多いというか、花より団子とはまさに雪兎のことだ。
「買い物はこれで全部か?」
「うん。あ、せっかくだし……」
手に持った大きいというより巨大な紙袋から、器用に何かを探り出した。
いつの間に買っていたのか、串団子を手に持って、雪兎は側の神社を指差した。
「ちょっとお花見して行こっか。」
月峰神社にはいくつかの桜の木が植えられていた。
「はい、桃矢のぶん。」
「さんきゅ。」
 差し出された団子を受け取り、買い物袋を足下に置いて桜の木に寄りかかった。雪兎も袋を置くと桃矢と同じ木に寄りかかった。
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