―本棚―

□消えた犯人・・・密室殺人の謎を解き明かせ!?
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「栩堂くん、“バイト”してくれる?」
にっこりと笑顔で、みどり薬局の店長・花蛍が自分の店のバイトである栩堂風疾の仕事中に呼びかける。
「え、っと……今してるんですけど……」
「お約束だね〜。」箱に詰め込まれた商品を棚に並べる風疾。いつも同じ反応を示す彼に、花蛍は呆れもせず、笑った。
「そっちじゃない方の仕事。やる?」
「あ、はい!」
「お前……」
違う棚の整理をしていた同じバイトの火群陸王が棚の影からひょっこりと顔を出し、花蛍の代わりに呆れたようなため息を吐く。
「いい加減、内容を確かめろ……」
「それじゃあ」陸王が会話に割り込んできたことなどお構いなしに、花蛍はパンパンと手を叩いて言った。
「店の奥に来てくれる? ああ、店番は置いておくから。」
返事をしながら風疾がレジの方を向くと、ザングラスを付けたまま熟睡する斎峨の姿があった。

「今回の依頼はね、解決して欲しいんだって。」
「何を?」
陸王が扉を閉めるのとほぼ同時に風疾が花蛍に訊ねた。
「密室殺人事件。」
「へー……って、えええぇぇぇッ!?」
「うるせ……」
目を丸くして驚く。まるで誰かが“エイプリル・フール”と叫ぶのを待つかのように、周りを見回した。もちろん、そんなことを期待する方がどうかしている。
「ほんとの……殺人事件を……?」
「うん。」
にっこり笑顔を崩さず、花蛍が答える。そんなくだらない嘘を吐くという無駄なコトをする花蛍ではない。


『日時と場所、事件のあらましは各ケータイにメールしておいたから。』
そんな花蛍の最後の言葉が、まだ耳に張り付いている。はぁっと深いため息を吐いた。
「お前が内容も確かめないで返事するからだ、バカ。」
今回ばかりは、自分をバカ呼ばわりする陸王に返する言葉はない。
つくづく後悔は先に立たないと思い知らされるな、花蛍さんの依頼は……。
そんなコトを考えながら、風疾は陸王と共に事件のあった25階建てマンションの一室の前に立っていた。
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