でろーん

妄想垂れ流し注意。基本夢っぽいのおいてあります
◆ いないいないばあ!/現パロ/竹谷 

けむくじゃらの、ぼわぼわしたぬいぐるみみたいな犬と目が合った。
反射的に「さすがに二匹目を飼うのは難しいかな」なんてことが頭に浮かんだけど、どことなく間抜けそうな顔をした犬にはリードがついていた。(つまり飼う飼わない以前にすでに飼い犬だったのだ)

「(でも、あの犬可愛かった。やっぱり飼うなら大きい犬がいいよな、大きい犬ならこんな狭いマンションじゃかわいそうだ。そうか、引っ越し…)」
そんなくだらないことに考えを巡らせながらマンションに着き、部屋の鍵を差し込もうとすると突然内側から扉が開く。

「あ、やっぱりいた」

ひょい、と扉から顔だけ出された灰色の痛んだ髪が少し揺れ、凛々しい眉の下にあるくりりとした目が嬉しそうに輝いた。

「おかえりなさい。ご飯、もうすぐできますよ」

「……なんで帰って来たってわかったの」
「勘です」

そう言って目の前の飼い犬……げふん、もとい同居人はにかりと人懐っこい笑みを浮かべた。


***


「今日は少し早いんすね、珍しい」
「うん、そうなの。やることが少なくてね」

会話をしながらもテキパキと手を動かすこの男は「八左ヱ門」という名前らしい。
らしい、というのは私が八左ヱ門のことをほとんど知らないから。
八左ヱ門が私のマンションの前でぶっ倒れていて、私がうっかり彼を拾ってしまい、一緒に住むようになった時に名前だけを教えて貰った。
古風な名前だね、と言ったら、ちゃんと本名っすよ、と苦笑いされたのだが果たして本当かどうかもわからない。(だって苗字すら教えてくれないんだもの)

まあ名前なんて記号みたいなもんだし、本人がそういっているのならそれでいい。なぜマンションの前で倒れていたか、などという深い事情に突っ込むつもりもさらさらない。
つまるところ、彼と私の間で意思の疎通が図れればさしたる問題はないのだ。

一緒に暮らす代わりに家事手伝いを申し出た八左ヱ門のご飯を食べて、話して、風呂に入って寝て。
ベッドの中で鼻をくすぐる料理の匂いに目を覚まして、また八左ヱ門のご飯を食べて仕事に行く。

――特別なことも何もない、そんな毎日が過ごせればそれだけで充分

それが八左ヱ門と暮らしはじめて二ヶ月と十二日の私の見解である、まる。



「八左ヱ門、今日の夕飯は?」

ひょいと料理をする手元を覗き込むと柔らかく笑ったのが空気で伝わった。

「鯵の開きと炊き込みご飯と、ウドの酢味噌和え、昨日煮たひじきの余り、それと味噌汁」
「味噌汁の具は?」

「そうですねー…」

ううんと考えるそぶりをしながら野菜室を見る仕種がなんだか様になっている。

「キャベツが残ってたから入れてみましょっか」
「…味噌汁にキャベツ?」
「そ、味噌汁にキャベツです。食べたことないですか?」
「ない。初めて聞いた」

ざくりと大きめに切られたキャベツが鍋の中に投入される。
鍋に放置されたままお玉の中でゆるゆる溶けていた味噌を混ぜながら、意外とおいしいんすよ、キャベツ。と訝しげな私の視線に答えるように呟いた。

「…まあ、八左ヱ門が言うならおいしいのかもね」
「おいしいかも、じゃなくておいしいんです!」

急に表情を引き締め、真面目な顔をしてこちらを見るものだから思わず吹き出してしまった。(ちょっと、なんで笑うんですか!!)(八左ヱ門の真面目な顔が面白くて、つい)(俺に失礼!)

「ねぇ八左ヱ門、私は君を拾ってよかったよ」

ご飯もおいしいし、一緒にいると楽しい。
家に帰ったらおかえりなさいと言って迎えてくれる人がいる、それがなにより嬉しいのだ。

「……もう、なんですか急に」

照れたようにそっぽを向く、耳のふちが少し赤い。
ころころと変わる表情に愛しさが込み上げて、ぼさぼさの髪をかきまぜるように撫でる。
「うわ!なにするんすか!」と八左ヱ門は少々大袈裟に体を跳ねさせたが、しっかりと笑っているのを私は見逃さなかった。


Peekaboo!
(手をどかして見えたものはあなたの笑顔!)

(あ、味噌汁おいしい)
(ほら、言っただろ!?)




………
おなかすいた

2012/04/13(Fri) 18:09 

◆泣き真似じゃ落ちませんよね/現パロ/鉢屋 

※お下品注意※



「ほら、くわえろよ」

その言葉と共に眼前に突き出されたのは、ぺらりとした一枚の、布。

……すごく、トランクスです…。

「…いや、トランクスじゃん。パンツじゃん。」
「そうだよトランクスだよ、パンツだよ。くわえろよ」

なんだコイツ。


「鉢屋さん、あなたはいったいぜんたいどうしてしまったのですか」

「聞くか? 話してほしいのか? ん?」
「理由を聞かなきゃやってらんないぜ!」

私をふっと一瞥し、手の平を上に向けて肩を竦める三郎。
外人さんとかがよくやっている、所謂やれやれ的なポーズである。こっちがやれやれである。
まったく君はしょうがないやつだな、言わなきゃわからないのかい、アーハン?みたいな顔をされても非常に困る。

「いいか、よく聞けよ。この、俺のパンツをだな」
「三郎のパンツを」
「お前に」
「私に」
「くわえてほしいんだ」
「ははぁなるほど。だが断る。」

「なんでだよ、穿くよりくわえる方がマシだろ。」

ぺしぺしと手に持ったパンツで顔をはたかれる。
反射的にぎゃあと奇声を発し、奴が持っているブツを叩き落としてしまった。いかん、ちょっと強く叩きすぎた。

「ちょっ、ばっ、やめろばっちい」
「なんだと、ばっちいとは失礼な!下ろしたての新品パンツだぞ、使用済だとさすがにかわいそうだと思ってわざわざ買ってきたのに!!」

酷い!と言いながら顔を覆いさめざめと泣きまねをする鉢屋コノヤローが、わざわざ私にくわえさせるため新品のパンツを下ろすとかそんなアホみたいな事をしでかすとは思わなかった。
そんな気遣いができるならなぜパンツをくわえさせるという選択肢を排除しなかったんだ…。

「三郎、君というやつは実に馬鹿だな…」

哀愁に満ちた目でぽんと肩を叩いてやると、指の隙間からチラリとこちらを伺う三郎。

「そんな哀しみに満ちた目で俺を見るくらいなら、ぜひともこのパンツを…」
「ねーよ」
「いいから早くくわえろよ」
「急に強気になったね三郎くん。やめてその汚らしいものを私の顔に近づけないで。いい加減諦めて。引き際を知って。」
「押して押してお前が頷くなら、俺は絶対に諦めない」
「無駄なポジティブシンキングだな。試合が終わった後のような爽やかなスポーツマンスマイルを浮かべるんじゃないよ」
「パンツくわえさせたお前の写真を撮って夜に右手としっぽ「うわああああ!!」…っていう計画が」
「もうやだあー私帰る。突然呼び出されたから何かと思ってたのに。ちょっと期待してたりもしたのに。」

えっうそマジでごめんちょっと待ってと言いながら私の脚に絡み付いてくる三郎に一蹴り。
三郎の全力の謝罪の声をBGMにドアを思いっ切り閉めた。何か挟んだ気がしないでもないけど気にしない。

明日までは携帯の電源も切っておこうと思う。


……………
途中から鉢屋くんがしっぽりとか言い出したのは私のせいじゃないです鉢屋くんの暴走ですぅ><

2011/12/21(Wed) 18:53 

◆好きって言って/現パロ/尾浜 

※三角関係五い
→尾浜に落ちてその後の話

………………


「ね、俺のこと好き?」
「…勘ちゃん?」

彼女の頬を撫でる手が震える。情けない。俺はいつからこんなに女々しい男になってしまったんだろう

「不安、なんだよ。まだ君はあの時みたいに兵助のことを思ってるんじゃないか。今は俺のこと好きって言ってくれてても、いつか兵助の方に傾いてしまうんじゃないか、ってさ。
怖いんだ。すごく怖い。君が俺を見る瞳の中には、俺の姿なんか映ってなくて。そう考えると目を合わせるのも怖いんだよ。
…情けないだろ?俺はこんなに女々しい男なんだ。何時だって、君が兵助に取られちゃうんじゃないかって不安なんだ。そんなことないって、そう言ってくれても怖いんだ。兵助に失恋した君の心の隙間に付け込んだようなものだからさ。だから、もし、また君が兵助の事を見たら、俺は、俺は」

「勘ちゃん」

彼女が優しく微笑んでこちらを見つめる。
その目の中には情けない顔をした俺が映っていて

「…ね、俺のこと、好き?」

それは暗に、言って欲しい言葉を促す台詞で。

(好きって言って。)
祈る様に目を閉じた。

小さく息を吸う音がする。握られた手の平があたたかい。

「勘ちゃん、私ね」


「勘ちゃんのこと、愛してるんだよ」


彼女が少しはにかみながら言った台詞
それは望んでいた言葉よりも嬉しいもので。

その言葉を聞いた時に、情けなくも潤んでしまった瞳を隠すため
目の前の身体をもう離すまいときつくきつく抱きしめた。



………………
彼女と付き合うんだけど、また彼女の気持ちが久々知に傾いたりしちゃうんじゃないかって不安になる尾浜くん。
女々しくて尾浜。女々しい尾浜可愛い。


タイトル:独占欲で10のお題より


2011/12/21(Wed) 15:27 

◆ 好き過ぎて死にそうだぜ!/黒木 

めそめそと泣く私の前にちょこんと正座する彼が、幼い見た目にはそぐわぬしっかりとした声音で私を宥めた。

「先輩、泣かないで下さいってば」
「ううう、だってぇ…」

ぱっと顔を上げると凛々しい眉毛がいつもより、ほんの少し下がっている。

「別に一生会えなくなる訳じゃないんですから。」
「…でも毎日は会えないじゃない」
「そりゃそうですよ。先輩、卒業したらお城に勤めるんでしょう? 勤めるんだったらちゃんと働かなきゃいけません」
「あああこんな事なら利吉さんみたいにフリーのプロ忍にしとけばよかった!!」
「やめといたほうがいいと思います。フリーよりも城勤めの方がお給料安定してるし、利吉さんみたいに忙しくなったらもっと会えなくなりますし」
「庄左ヱ門たら冷静ね!!」

淡々と言葉を紡ぐ年下の彼に2コンボ3コンボと正論のダメージ。
あとふた月もしたら私はこの学園から去ってしまうというのになんという落ち着きぶりだろう。
庄左ヱ門はきっといい先輩になるに違いない。っていうか弟さんいるんだよね、あの一年は組のリーダーだし頭いいし冷静だし絶対いい先輩になるわ庄左ヱ門。あー、もう少し私が遅く生まれてたらまだ一緒にいれたかな、なんて現実逃避をし始める頭に「それに」という小さな呟きが響く。

「……それに?」

「…先輩が」

正面に正座していた彼が立ち上がり、私の傍に移動する。
ぐっと顔を近づけられなんだなんだと思っていると、小さな親指で涙の跡を拭われた。

「先輩が、利吉さんみたいにすごく忙しくなって倒れでもされたら僕が困るんですよ」

先輩、あまりご自分の体のことなんか気遣わないんですから。と苦く微笑まれる。



とっ、


ときめいた。

「うわああん!庄左ヱ門、卒業したくないよおおお!!」
「…ならしないで下さいよ」
「無理だよお内定貰っちゃってるもん!!」

「僕だって、」
「うん」
「僕だって、寂しいんですからね」

庄左ヱ門は立ったまま、私は座ったままの体制で抱きしめ合う。

付き合いたての当初は、五つも年下の相手に何やってんだとか、ほう、お前も留三郎のような趣味を持っていたのかとか、私の後輩に手出さないで下さいとか散々なことを(主に私が)言われたりしたけど、やっぱり庄左ヱ門のこと好きで良かったなぁ、なんて思ったりして。

でも、もしかして。
もしかしたら五年もの歳月のうちに、

「…言っておきますけど、どうせ先輩の事ですから
『五年もしたら私の事なんか忘れて若い子に現を抜かしたりするんでしょ!』
とか考えてると思いますが、残念ながらそんな気はこれっぽっちもありませんからね」
「……うん、庄左ヱ門声真似上手いね。音声忍志望?」
「違います」
「あ、そうなの。…ねえ庄左ヱ門」
「はい?」
「庄左ヱ門が卒業したら、黒木の姓を私に貰える?」

ぱっと庄左ヱ門の頬が赤くなる。

こんな風にすぐ赤くなるようなところはまだ子供だなぁ、と思いくすりと笑うと、笑わないで下さい!と怒られた。

「ふふ、ごめんね」
「もう…。そんなの当たり前じゃないですか」
「やった、私頑張って待つからね」
「はい、待ってて下さい」

しばらくぎゅうぎゅうと顔を埋めるように庄左ヱ門を抱きしめていると、ふいに先輩、と呼ばれた

「ん? どうし…っ!?」


「先輩、先程の約束、忘れないで下さいね」


不適に笑いながらも赤くなっていた彼のことをからかえなかったのは、ほんの一瞬だけ触れ合った唇に、柄にもなく染まってしまった私の頬と、形がはっきりわかるほどに熱くなってしまった耳を隠すのに精一杯だったからと少しだけ言い訳。


好きすぎて死にそうだぜ!



…………………
忍たまの就活は確か卒業してからだったなぁと思いながら。\うそやで〜/

2011/11/24(Thu) 06:57 

◆ 繋がらない、繋がれない/不破 

「好き、好きだよ愛してる」

呪文のように毎晩繰り返されるこの台詞を聞かされる彼女は一体どんな気持ちなんだろうか。

柔らかい肌を撫で指を絡めとる。
たったそれだけの動作に僕の心臓は壊れてしまうんじゃないかってくらいに跳ね上がるんだ。

「好き。好きなんだよ」

ねぇ、どうして何も返してはくれないの。
ただただ僕の事を見つめる彼女の瞳には何の感情も浮かんでいなくて、その事実にどうしようもなく悲しくなる。
縋るように彼女をもう一度見つめると、柔らかい唇にそぐわないように掠れた声がたった一言。「らいぞう、」と言葉を紡いだ。

「らいぞう、もうやめようよ」

ぽつりと呟かれた言葉が、ずん、と音を立てて胸の底に落ちた。

「ね、もうやめよう」

するりと頬に添えられた彼女の手は酷く冷たい様に感じる。
少し熱を分けてあげようと思って重ねようとした手が、ゆっくりかぶりを振った彼女の動作に止められる。

「…どうして、」

そんなことを言うの、と続けようとした口がからからに渇いている事に気が付いた。

「雷蔵、私は、」
ぐっと唾を飲み込んだ彼女の喉がやけに目に付く。

「私はあなたの恋人の代わりにはなれない」

そう呟いた彼女は、酷く辛そうな顔をしていた。




わかってる、わかっていたんだ。目の前にいる彼女はあの子の代わりにはなれないことを。
ただあの子がいなくなったのを認めたくなくて彼女に縋って、ああ、僕はなんて最低な奴なんだろう。


ごめんねと呟こうとした唇は引き攣った嗚咽しか出してくれず、頬に添えられた彼女の手に温い水が伝った。


認めたくない事実と突き付けられた現実でぼんやりとした頭に「初めから私を好きになってくれれば、」と言う彼女の涙交じりの声が響いた。



………………………
補足的説明。

女の子→雷蔵→←あの子

あの子とはこの話に出てくる女の子の双子のお姉ちゃんだかなんだか。
お姉ちゃんが忍務かなんかで亡くなって、その事を認めたくない雷蔵さんが夜な夜なお姉ちゃんとそっくりな女の子のもとに夜ばいに言ってすきすき愛してるしてたよって話。
女の子は雷蔵さんの事がずっと好きで、でも雷蔵さんはお姉ちゃんが好きで。
初めから私を好きになってくれていればあなたも私もこんなに苦しい思いをしなくてすんだのに、というようなお話でした。

説明長い上によくわからん。

2011/10/22(Sat) 12:29 

◆ 愛は指先から凍る/善法寺 

「善法寺、私のこと殺してよ」
ぜんぽうじ、だって。今まで散々「伊作また怪我しちゃった、治療お願いしまーす」なんて笑いながら医務室に来てたのに、都合のいい時だけ壁を作って。
ねぇ君はさ、僕の気持ち考えた事ある?
「君のそういうところが嫌いだよ。」
そう言いながら細い首に絡めた自身の指に力がかかるのを止めなかったのは、


…………………
君の目に映る最後のものが僕でありたかったから。

2011/10/21(Fri) 07:12 

◆泣けないわけを探す理由/現パロ/立花 

足元に剃刀が投げ捨てられた。
血が付いていない刃。
目線を上げて確認した白い首筋、細い手首に、傷は一つも付いていなかった。

「仙蔵、私死にたい」

目の前の彼女が虚ろな目で微笑んだ。

「度胸がないから、死ねない?」

「そう、そうなの。」

ベッドソファに身体を預け、目元を覆う姿は泣いているようにも見えた。

「死にたいんだけどね、死にたくない」

「よく分からんな」

「でしょう?」


私が死んで、

小さな呟きが部屋に響く。

「死んで、私のいない世界を見てみたいの
私がいなくても、変わらずに進み続ける世界を見たいの
…わかる?」

いつの間にかこちらを見据えていた顔は、泣きそうに歪んでいるのに、ただの一筋さえ涙が流れていない。

「わからん」

ひらひらと手に持った剃刀を軽く振る。

「全くもってわからんな」

ちらちら、きらきら。

剃刀に反射した光がきらきらと部屋の中を行き来するのが、隣に居る彼女と酷く不釣り合いに見えた。


「ねぇ、仙蔵」

「どうした」

「私が、私が死んだら、湖の底に沈めてよ」

「…海では駄目なのか」

「んーん、湖」

湖がいいの。と前を見たまま譫言の様に繰り返す。

「水の中からね、空を見てみたいの。」

そう言って、もう一度緩く微笑んだ彼女の瞳から、涙はまだ零れていなかった。


「そうだな、
もしお前が死んだらな。」


手の中にある剃刀には、一つのくもりも見つからない。

今までも、これからも。

2011/09/23(Fri) 22:44 

◆双忍 

「いいかい、帰りは何があっても後ろを見てはいけないよ」
狐面が謡うように言葉を紡ぐ。
面に隠された唇が、ゆるゆると弧を描いた。
「もし振り返ってしまうと―…」
狐面の片割れ。ふわりとした茶色の髪が風に靡き、悪戯っぽく口元に指を当て、微笑んだ。
「――鬼に食べられてしまうからね。」
ちりん、と鈴のような音が聞こえた。


………………
っていう妖怪パロが書きたい

ついったに上げたのを少し手直し。

2011/09/20(Tue) 07:20 

◆見てるだけ 

話してしまったらもっともっとと欲がでて、歯止めが効かなくなる。だから、見てるだけ。
教室の窓から横顔を、食堂で後ろ姿を、廊下ですれ違う時にふっと香る君の匂いに緩む頬。一瞬だけでも目が合えばしあわせ。
だから、もう少しだけこのままで。
今日も君を見つめながら、唇だけで「好き」を象る。



……………
以前ついったに上げたもの。

2011/09/02(Fri) 08:13 

◆きみと二人の/綾部 

どくどくどく、ごごごご。
耳を塞いで聞こえるのはね、自分の心臓の音と血液が流れる音なんだって



小さな小さな地鳴りのような音がする。
穴の底で俯いて、耳をきつく塞いでいる私はどのようにみえるのだろうか。

遠くから自分の名前を呼ぶ声。
顔を上げる前におひさまの光が一瞬だけ遮られて、目の前に、足。

ゆっくりと目線を上げていくと、

「あは、きはちろー。」
「名前、」

名前、何回も呼んだのに。と少しだけふて腐れる彼の為に、隣を空けると迷わずにぴとりと寄り添われた。

「なにしてたの」
「うん?」
「耳、塞いで」

「ああ、あのね、こうするとね、」

喜八郎の耳を私の手で塞ぐ。

「こうするとね、小さい地鳴りみたいな音が聞こえるでしょ」
「うん」
「それをね、聞いてたの」

へぇー、と興味があるのかないのかわからないような返事をし、喜八郎がこちらに手を伸ばす。

「ね、僕の手でも聞こえる?」

耳を塞がれているせいで、喜八郎の声がぼわーっとして聞こえる。変なの。

「うん、聞こえるよ」

「じゃあ僕たち」


喜八郎と目が合って、微かに微笑まれる。
触れられている耳と、触れている手の平がちょっぴり熱くて、でも喜八郎の耳も手の平も少し熱くて。

あれ、もしかしなくても私たち



おそろいだね


君と二人の穴の底は、存外心地の良いもので。

2011/08/29(Mon) 16:09 

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