本編外

□廻り来たアイ
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めぐる、巡る、廻る、…。

果てなき世界を、ただメグル。

死した時より、この事象に、どうやら組み込まれていたらしい。
そんな自分に苦笑して、そんな自分を嘲って、そんな自分である事を受け入れた。



「成る程…、確かにこれは醜い世界ですね」


数多の子供は皆死んでいった。いや、殺されていった…か。


くるりと辺り一面を見回せば、先程まで実験に勤しんでいた大人が失敗に腹立てていた。

――それが成功していた事にも気付かずに。



「クフフ…。ねぇ骸、私は貴方のように…」


手術台の上で上体を起こし、右目を瞼の上から軽く押さえて、……笑った。



「優しくはなれないみたい」



死んでいないどころか、笑い出した藍色を持つ少女に一人の研究員が近付く。

それが、…転機。



「さようなら。もう会う事のない貴方…」


心の病んだ人間などマインドコントロールする事はたやすい。
此処、エストラーネオにいる大人を、己の手を汚す事なく殺す術。



「せいぜい楽しく殺し合ってくださいね」


クフフと小さく笑いながら、手に持つのは三叉槍。
この先、手を汚す事など数え切れない程あるだろうから。


断末魔が響き渡り、血で濡れて行く部屋を見る。



「すみません骸。私は貴方のように、自分を犠牲にしてまで綺麗な世界を望めない…」


瞳は憂いを帯び、三叉槍を持った手は祈るように組まれた。



彼女が知っていた彼は、汚く醜いこの世界を壊してしまおうとした。
けれど、その位置に生まれてしまった彼女には無理だったのだ。



この世界が愛しかった。

この世界が大切だった。

この世界が支えだった。



「けれど私は、世界にあげるには命(こころ)が惜しい」


大人の断末魔に引き寄せられたのだろうか。カタリと背後でした音に、彼女は笑う。

大人が全て息絶えた事を確認し、生きて行く上で必要な金目の物を拝借していく。
そして禁弾を懐に一応忍ばせて、そこでようやく振り返ったのだ。



「一緒に来ますか?」



差し延べた手に、重なった二つの手。
それをしっかり握りしめ、彼女は言うのだ。



「私の名前は、……六道ムクロです。さぁ、私達の世界を作りにいきましょうか」




ねぇ骸

私は貴方にはなれないけれど

貴方の分まで生きるから

貴方の名前を貰うこと

どうか許して




彼女の物語は、まだ始まったばかり…。

 
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