本編外

□空の姫君、波の奇跡
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そこに生まれたのは、偶然か必然か。


――すべては、星だけが知っている。











実の母親に殺させてしまった、かつての私。

そんな記憶を持ったまま新たな生を受けた私は、すぐに自分の立ち位置を、そして運命を、知る羽目になった。


だが、決してそれを厭いはすまい。
それが、この場に立つはずだった彼女への……恩返しだから。





「あ…、動いてる…」



そんな失礼な言葉を聞き流せるのは、言葉を発したのがブルーベル――少女であるから。

昔から結構な女好きであったが、それは今も変わらない。可愛い少女は好物だ。



しかし、と、ユニは思う。


見れば、呆気に取られたような白蘭達の顔。

…………傑作だわ。

どうしてこう育ってしまったのかは知らないが、ユニは内心笑っていた。
嫌な性格である。




「ユニが…自ら口をきいた…」


傷だらけでそう零す正一に、きゅっと手を握りしめる。

血が…脳裏を過ぎり、大切な者達の顔が、浮かんでは消え。
ユニはしっかり前を見据える。


それでも私は……、


「でかくなったなユニ」

そう言って笑ってくれる彼に感謝する。

だって私は……、
笑っていなければ、…母にも、ユニにも。
失礼でしょう?




「はじめまして、ボンゴレのみなさん。ユニと申します」


世界を包み、慈しむような笑み。
愛しい者がいるからこそでき得る、大空の笑顔。




「元気を取り戻したみたいだね、ユニちゃん」


急に笑って言った白蘭に、疑問を浮かべるボンゴレ側。
しかし、彼女はユニであってユニでないもの。
今までの出来事全てが、彼女に取っては想定内。



「白蘭、白々しい笑みを浮かべないで。虫酸が走ります」


「は?」

「えぇ!?」



大空の笑顔そのままに、ユニは笑う。
周りが驚いたって、構うものか。



「本当に元気一杯になってくれて嬉しいよ。ねぇ、ユニちゃん」


所詮君はミルフィオーレのナンバー2なのだと。
意見は求めていないと。

そんな目で見る白蘭に、ユニはそっと息を吐き出す。


「私がありがとうございます、…なんて言って納得すると?」

「そう言ってくれるとなお嬉しいよ」

「…わかりました……」



多少重要部分が欠けようが、ユニが困る事はない。それが手札ともなろう。

言い方としては気に食わないが、……下剋上。させて貰おうではないか

「私、ミルフィオーレファミリーを脱会します」


けろっとそう言ってのけたユニは、カツカツとボンゴレ――綱吉に近付いていき、手を取った。




「綱吉さん」

「え、あっあの…」


しどろもどろで赤くなる綱吉を可愛く思い、ついつい大人びた笑い声を漏らす。



「私の、いいえ…私達の逃亡劇に、付き合って貰いますね!」


有無を言わせない調子で高々と言われたその言葉と共に、辺り一面にまばゆい光が放たれる。

白蘭だけでなく、皆一同がユニを見遣った。
その胸元で、光り輝くおしゃぶりを…。
そして、彼女の持つ、仲間のおしゃぶりを……。




「じゃ、あんな若白髪放って逃げましょう」


さあさあとボンゴレを促し、ユニは振り返って笑った。



「白蘭。あなたがいくら人々を支配しても、……世界はあなたの物にはなりませんよ」





どうか覚えていてください。


大切な人が一人。

それだけで、人の世界は回るのです。


……願わくは、それを知らない寂しいあなたが

この世界で救われますように……。










 

「じゃあなんで…」

真六弔花に良いのかと問われながら、ユニ達が去った方向を見つめ、白蘭はぽつりと呟く。


「なんで君は、この世界一つにしか、存在しないのかな。不思議で堪らないよ…ユニちゃん」










彼女が彼の世界になるまで、……あと、少し。





 
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