短編(アイシ・ヒルセナ)

□トロフィー
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正直言って、俺はこのトロフィーをあまり見たくない。
見ればどうしても、あの時の糞チビを思い出してしまうからだ。
痛めて、震えが止まらなくなったあの細い腕を。
このままコイツが壊されるくらいならクリスマスボウルなんて、とすら考えた。
しかしその考えを捨てさせたのも他ならぬコイツだ。
俺は見た。コイツが痺れた手を必死で動かそうとしていたのを。
コイツが諦めていないということが、伝わってきた。
糞ガキ共は。当のこのチビですら、俺の右腕の心配ばかりしている。
だが今までに俺がこの小さな身体に強制した数知れない無理こそ心配するべきだと思う。

トロフィーがどうやら完成したようだ。
じゃあこれで接着剤で、と誰かが言い、ようやく終りに差し掛かったパズル大会。
すみません。何かこれ、余っちゃったみたいです。。。
比較的大きな破片を示しながら情けない声を出したのは、トロフィーの持ち主である糞チビだ。
ええ?とか、何やってんだセナ!とか。不満と抗議の声が上がる。
なくても大丈夫じゃないかな、と弱々しく言い訳する糞チビに全員がダメだと怒る。
最初からやり直しらしい。
よし、頑張るぜ!というモン太の掛け声に皆がオ〜!と答える。何だ、この結束は。
でも考えてみると。案外デビルバッツの繋がりもこんな感じかも知れない。
この頼りなさ気なチビを中心にして、世界が回っている。
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