頂き物&献上品(セカコイ)
□【頂き物】そういえば、そんな事もありましたね。
2ページ/7ページ
今日の俺は、今朝から上機嫌だった。
理由は簡単。角先生の小説が映画化し、その前売り券を購入したからだ。
漫画にしても文芸にしても、映像化はファンにとっては嬉しい反面、世界観を壊される不安がある。
だが今回の映画はキャストも実力派揃いでイメージ通りだし、監督も脚本家もこれまでも角先生の作品を映像化して成功に導いてきた人達だ。今回も、かなり期待しても良いと思う。
前売り券に付いてきたブックカバーも、やはり角先生の映画だけあって、お金かけて作ってあって上質だったし。家に帰って即、先生の本にかけた。
更に良い事は重なって、つい4日前に締め切りが明けたのに、武藤先生がもう来月号分のプロットをあげてくれた。
今月って俺、星占いとかで見たら運勢いいのかな?
なんて、普段は鼻で笑っている占いに感謝してみたり(鼻で笑うと『占いは乙女の心のサプリメントだっ!』とか何とか高野さんに怒られる)。
どうしよう。今俺は、本当に幸せだ。
「あれ〜、律っちゃんコンビニ?」
「あ、ハイ。今朝出勤する前にお昼買い損ねちゃって。」
「そっか〜。あ、じゃあさじゃあさ!悪いんだけど俺の分も買ってきて〜。シャケとツナマヨおにぎりね。」
周期も明け、比較的ゆったりとしている乙女部。ゆっくりとお昼ご飯を食べる余裕があるのは、本当に嬉しい。
木佐さんに『俺の分ね〜』と言って渡された1000円を財布に入れ、俺は意気揚々と編集部を出た。
今は本当に気分がいいから日頃の感謝を込めてご馳走しても良かったんだけど、まぁソコは先輩の顔を立てて。
柄にもなく鼻歌を歌いながら廊下を歩いていると、喫煙所にいる高野さんが目に入った。
どうやら一服中のようで、その綺麗な指に挟まれた煙草からは紫煙が昇っている。
だけど同時に視界に入ったのは、同じく一服中の横澤さん。
2人を見た瞬間、さっきまで幸せいっぱいだった俺の気持ちがサーッと引いていった。
丸川書店内で2人でいるところを見かけるだなんて、しょっちゅうある事。
だって横澤さんは月刊エメラルドの営業担当で、高野さんはそのエメラルドの編集長だ。
だけどこんなモヤモヤした気持ちに駆られるのは、
今の2人が仕事モードではなく、【親友】として一緒にいるからだろう。
この気持ち、知ってる。
武藤先生のプロットにも書いてあった。
多分この気持ちは………、嫉妬。