拍手短編(アイシ)

□ジレンマ
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ヒル魔は黙って聞いていた。NASAエイリアンズ戦。遥か昔のような気がする。
ヒル魔にとってあの試合の結果は、正直なところどうでもよかった。
そもそも勝てる相手ではなかった。パンサーを引きずり出し1点差まで追いすがったのは奇跡。
10点差以上で勝ったら、アメリカ行きのチケットを取り上げる。
10点差以上で負けたら、旅費をまきあげてやる。
つまりどうなっても国外退去を口実にして、アメリカでデスマーチをするつもりだったのだ。

あの試合がどうだろうと結果は変わらねぇ。何が何でもアメリカに来てたぜ。
ようやく口を開いたヒル魔の真剣な表情に、セナはおや?と思う。
そういえばなぜヒル魔はアメリカ行きにこだわったのだろう。
パスルートを走るのも、トラックを押すのも、石蹴りも。日本でだって出来る。
そんなセナの顔色を読んだのか、ヒル魔が笑った。いつもとは違う優しげな笑みだ。
日本でヘルメット付けたまま夏中ずっと練習してたら、テメー死ぬだろ。
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