短編(アイシ・ヒルセナ)

□ホワイトデー
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何か欲しいものねぇか?
ヒル魔はセナに聞いた。セナは突然の問いの意図がわからず小首を傾げている。
ここはアメリカのホテル。
セナもヒル魔も世界大会の日本代表として渡米中だ。
そして2人きりの部屋で、ヒル魔はセナに聞いてきたのだった。

質問の目的はホワイトデーだ。
約1ヶ月前のバレンタインデーの時、セナはヒル魔にペンダントを贈った。
それはデスマーチの石を加工したものだった。
セナが光速の走を獲得するために、必死に蹴り続けたあの石。
それにさらに手にいくつも傷を作りながら、丹念に細工されたペンダント。
貰ったときは本当に驚いた。そしてすごく嬉しかった。だが。

ヒル魔は今、途方にくれていた。
これだけの想いが込められたものに対して、何を返せばいいのかと。
どれほど金をかけた高価なものも、凝った演出も。
この石の前ではわざとらしいだけだ。
どれほど頭をめぐらせてもこの石に匹敵するものなど、思いつけない。
そうしている間に刻一刻とホワイトデーは近づいてくる。
ヒル魔はついに降参して、セナに直接聞くことにしたのだった。

欲しいものはもうもらってます。
一緒にアメフトが出来て、こうやって2人きりの時間があって。
ホワイトデーと言われたセナは、そう答えてフワリと笑った。
何か贈りてぇんだよ。欲しいものねぇのか?
ヒル魔はまた問いかける。想いを形にしたいのはヒル魔とて同じなのだ。
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