短編(アイシ・ヒルセナ)

□節分の豆は?
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今日は節分ですよ。
ヒル魔の前には節分用の豆の袋を持ったセナが立っていた。
おい、豆まきするとか言うなよ。掃除が面倒だ。
ヒル魔はノートパソコンを操る手を休めることなく、セナの方をチラリと見た。
ここは部室。どんなに汚そうと散らかそうと、片付けるのは部員だ。

さすがに豆まきは大変ですから、食べるだけですよ。歳の数だけどうぞ。
セナが袋をヒル魔に差し出した。
フン、糞チビめ。考えやがったな、とヒル魔は心の中で密かに笑う。

ヒル魔さんの誕生日っていつですか?
セナは自分の誕生日以来、何回か聞いてきた。
ヒル魔はその都度、さぁな、と誤魔化してきた。
別に隠すつもりもない。必死に聞き出そうとするセナが面白いだけだ。

そこで節分だ。
食べた豆の数で、ヒル魔が誕生日をもう迎えてるかどうかがわかる。
あわよくばそこから一気に攻め込んで、聞き出そうという魂胆だろう。

こんなもんテキトーでいいんだよ。
ヒル魔は袋に手を突っ込んで、豆を一掴みした。
そのまま口に放り込んで、バリバリと噛み砕く。
あ〜あ、とセナはがっかりした声を出した。

まだまだ俺を騙そうなんて、早ぇぇ。
そして拗ねたように頬を膨らませるセナを見て、不敵に笑った。

【END】
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