短編(アイシ・ヒルセナ)

□デスマーチ外伝2
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姉崎まもりが最初に二人の関係に疑問を持ったのは、デスマーチの序盤だった。
過酷なトレーニングに部員たちは皆、疲れ果てている。
まもりは順番にアイシング用の湿布薬を配っていった。
最後にセナに「大丈夫?一応冷しとく?」と声をかけた。
まもりはセナが石を蹴りながら進んでいることなど知らないのだ。

「きっちり24時間後に出発すんぞ」
バテバテの部員たちの横をヒル魔がスタスタと歩いていく。
全然平気そうだ。大変なはずなのに。さすが。鍛えりゃ平気になんだよ。
部員たちが次々に驚きと賞賛のセリフを繰り出す。
まったくタフね。まもりも内心、彼らの意見に賛同した。
そのまもりをセナがそっと手招きし、小声でまもりに頼んだ。
「皆に見つからないようにヒル魔さんの手当てをしてあげてよ。」
「え?」
「念のため。ね?お願い。」

半信半疑なまもりだったが、セナの懇願に折れた。
救急箱を持って皆から離れたヒル魔の元へ向かう。
そして腫れて熱を持ったヒル魔の膝を見て驚いた。
嫌がる素振りを見せるヒル魔の足に手当てをしながら、まもりは不審に思う。
なぜセナは部員の誰も考えなかったヒル魔の異変に気づけたのか。
ましてまもりはセナはずっとトラックの荷台にいると思い込んでいる。
そしてまもりの知るセナは人の裏を読むことなどできない子供なのだ。
なぜ?どうして?
それはまもりの心の中に巣くう小さな不安の種となった。
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